外国人観光客の受け入れが再開した。この夏、地方の観光地が外国人観光客を集客するにはどうすればいいのか。経営コンサルタントの鈴木貴博さんは「短期的に効果が出る対策だけに集中することが大切だ」という――。
飛行機
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コロナ前と比べて「4分の1程度」の規模

6月10日から観光業界が待ちに待った外国人観光客の受け入れが再開しました。観光業界にとっては「ようやくインバウンドビジネスがもとに戻りはじめる第一歩」という感覚でしょう。ただ心配もあります。

再開条件のうち、新型コロナの感染リスクが低いと考えられる98カ国からというのは、日本にとっての主要なインバウンド対象国はほぼほぼOKなので問題はありません。ただ一日の上限が2万人という制限付きで、これは年間換算で約730万人になりますから、コロナ前の約3000万人と比較して4分の1程度の再開規模になります。さらに添乗員付きツアー限定という条件付きなので、この点ではそもそも上限の2万人に届くかどうかという不安もあります。

実はOECD加盟の先進国の多くは外国人観光客の受け入れ門戸を日本よりも早くかつより緩和した形で開放していて、そこではコロナ禍での節約分を一気に消費するリベンジ消費が発生しています。日本の場合、この段階的開放政策の制約のため少なくともこの夏のインバウンドによるリベンジ消費の効果も限定的になりそうです。

夏のインバウンド需要は他国に流れてしまうだろう

そして一番の問題は「なぜそうなのか?」という点です。表立っては言わないのですが、理由はあきらかに夏の参院選にあるとされています。これまで安倍政権、菅政権が支持率を下げたのはコロナの感染拡大のタイミングでした。もし6月の外国人観光客の受け入れで国内のコロナ感染者が増加したら7月の参院選に影響するということで「7月10日に想定される投票日までは慎重に行きたい」という思惑があるのです。

政府としては選挙後、7月中旬にさらなる開放策を決めればよいという立場なのでしょうけれども、実はこのことで夏休み期間に日本が受け入れられていたはずのインバウンド需要は他の国に流れてしまい、インバウンド消費はかなり抑えられてしまいそうです。さらに再開直後は東京、京都、北海道など人気の観光地に需要が集まり、地域経済にとっては機会損失が予想されます。

経営学では「機会損失」は一番痛手が大きい失敗だと教えるものです。本当だったらこの夏、地元に来てくれてお金をじゃぶじゃぶ落としてくれるかもしれなかった外国人観光客需要、それをなんとか取り戻せないか。そこでプレジデントオンライン編集部から「経営戦略コンサルタントの視点で観光地がこの問題を乗り越えるために今、何ができるのか? ガチで戦略を考えてほしい」という提案をいただきました。面白そうです。