この夏に間に合う「即効性のある方法」は何か
ちょうど先週、仕事で福岡と長崎を訪問することが決まっていたので、少し足を延ばして観光地も歩いてみながら、この難題を考えることにしたのです。題して「2022年夏の、地元の訪日観光客増加大作戦」です。
さて、コンサルタントが戦略を考えるにあたっては、「現地、現場、現物」というのが非常に重要です。実際にその場で関係者の話を聞いたり自分で体験することで、さまざまな可能性が浮かんできます。しかしここでの戦略のポイントは時間軸を考慮して施策を取捨選択すること。つまり「短期的に効果があがる対策だけに資源を集中すること」です。
「地元観光地でのDXの遅れ」という課題があったとします。インバウンド消費を増やすためにスマホで通訳ができ、スマホで情報取得が完了し、スマホで決済ができるのが便利だとわかっていても、その課題を乗り越えるのには時間がかかります。
和柄のてぬぐいを見て「これ欲しいんだけど、外国人だったらてぬぐいじゃなくてハンカチじゃないのかな?」と思ったとしても、製品改良にはやはり時間がかかるわけです。ですから気づいた改善策のうち「この夏までに改善でき即効性のある方法が何なのか」を考えることが重要なのです。
「紙のクーポン」を現地の旅行会社に売り込むのが一番早い
たとえば乗り物の「一日券」について考えてみましょう。私が訪れた福岡と長崎を旅行者の視点で見ると福岡は西鉄バス、長崎は路面電車で市内の観光地のうちのかなりの場所に行くことができます。他県からの観光客の場合はどちらの都市でも一日券が便利でコスパもなかなかいいと思います。西鉄バスの「福岡市内フリー乗車券」の24時間券はスマホで購入すると900円で、5回乗車するとほぼほぼ元はとれます。
長崎の路面電車はもっとすごくて一日乗車券は600円です。ところが交通系ICカードならターミナルでの乗り継ぎ含めて乗車料金は140円と元の料金が安いので、長崎駅からグラバー園、グラバー園から出島、出島からめがね橋へ行ってそれで長崎駅に戻るのに合計で8回路面電車に乗っても料金合計で560円と、まだ元がとれません。それくらいお得なのです。
こういった一日券のインバウンド版は本当はデジタルで主要言語対応してスマホで完結すれば一番いいのです。ちなみに福岡はその対応ができています。では今年6月10日段階でまだ対応できていない自治体の場合はどうすればいいのか?
実はもっとも簡単なのは紙での対応です。特に今回の政府のインバウンド開放条件は「添乗員付きツアー」なので、営業施策も旅行会社への働きかけが短期的に効き目を出します。そもそも日本の自治体はコロナ禍でのGo To施策のおかげで短時間に紙の券を発行する業務には慣れています。主要国の外国人旅行客に対する紙の一日券、紙のクーポン券を用意して、現地の旅行会社に売り込み、地元で添乗員に受け渡しする。こういった短期策のメニューを優先して考え実行することが「この夏のインバウンドの機会損失を少しでも無くす」という視点には重要なのです。