「また、腸内細菌自身の中でも代謝が起こり、その結果生じるさまざまな生成物が排泄物として細菌体外へ放出される。それらが含まれることで、『うんち』から発散されるさまざまなにおいとなる」

腸内細菌のシンプルな構造

細菌とは何か、簡単にまとめておきましょう。『うんち学入門 生き物にとって「排泄物」とは何か』で見たように、あらゆる生き物は、三つの「ドメイン」に分けることができます。多くの腸内細菌は、そのうちの「真正細菌ドメイン」に含まれ、すべて単細胞です。

腸内細菌の細胞は細胞壁に囲われ、内部にはDNAでできた遺伝子が入っています。

黒板に描かれた腸内細菌のイラスト
写真=iStock.com/TLFurrer
※写真はイメージです

しかし、遺伝子を囲む「核膜」とよばれる構造は存在せず、細胞内のはたらきを分業する細胞小器官も少ないという特徴をもっています。このような生物を「原核生物」とよびます。

ちなみに、海底の熱水噴出孔周辺の高温の海水中や、塩分の高い湖の水中などの極限環境に生活する「古細菌ドメイン」に所属する細菌も、この原核生物です。古細菌には、腸内細菌に含まれるものもいます。

一方、それ以外の生物はヒトを含め、核膜や種々の細胞小器官をもつ「真核細胞」から形成されています。真核細胞からなる多くの生物は多細胞生物ですが、単細胞で生活するものもいます。

腸内細菌が放出する硫化水素、インドール…

「腸内細菌は消化管の中で、どんな生活をしているのかなあ?」

うんち君は、ヒトの場合では1000兆個にも及ぶという腸内細菌の暮らしぶりが気になるようです。

前述のとおり、腸内細菌も生き物なので、その細胞内では当然、代謝がおこなわれています。腸に流れてくる食べ物の消化物を栄養分として細胞内に取り込み、種々の化学反応によってエネルギーを取り出します。

一連の反応の結果、生成された物質が排泄物として細胞外に放出されますが、それら腸内細菌が放出する物質のなかには、硫化水素などのイオウ化合物や、インドールなどのにおいのある化学物質が含まれています。

これが、「うんち」に特有のにおいをもたらす大きな原因となります。

「腸内細菌はほとんどすべての動物に寄生しているから、『うんち』に特有のにおいがあることは当然のことなんだ。もし腸内細菌がいなければ、『うんち』はほとんどにおわないだろう。でも、腸内細菌のいない消化管は存在しないから、『においのないうんち』はありえないんだ」

「『うんち』が臭い原因は、腸内細菌がいるからなんだね。そして、ほとんどの動物に腸内細菌がいるということは、ヒトも含めた動物の「うんち」に特有のにおいがあることは当然のことなんだね!」