皆で来ているのに、思いもかけないソロキャンプ

食事もほどほどに、すぐ近くでキャンプをしていた女の子三人組の存在が気になったチンコ痒男は、酒の勢いを借りて彼女たちの輪のほうに向かいます。フリスビー男とボーナス80万円男もビール片手についていったのは、いうまでもないです。

女の子三人組と男四人組……一人余ったあなたは、話の輪に入る勇気もテンションも持ち合わせていません。風上にいる女性たちからは、甘い香水の匂いが漂ってくる。

楽しそうに話す六人を横目に、残った鶏肉を頬張りながら、焚き火に夢中なフリをするしかありません。間が持たなくなれば、電波が入らない携帯の待ち受け画面を見て、YouTubeを見ているフリですよ。

「痒男くんって、腕太い~♡」とかいう黄色い声が聞こえる中、焚き火と携帯を交互に見るしかない。

そして、80万円男の「ちょっと河原、行ってみる?」という提案で、女の子とともに三人は消えていきます。残ったあなたは火の始末をして、先にテントの中に入り、隅っこに寝袋を敷いて寝ます。

最初に三人を誘ったとき、あなたはこんなキャンプになることを想像したでしょうか? 皆で来ているのに、思いもかけないソロキャンプですよ。

なぜかガソリン代と高速料金はぬるっと割り勘に

——四人用の広々としたテントで、まさかのソロキャンプ……。……それはきついです。

こんな孤立感を味わうキャンプなんて、ごめんですよね? 翌朝目を覚ますと、遊び呆けた三人が寝袋も使わずに気持ち良さそうにお腹を出して寝ているのを目撃します。三人からは、バニラだかココナッツだかのいい匂いが漂ってくる。

あなたは、気を取り直し、テントから出て、昨日の片付けをして、皆の朝ごはんを用意します。ようやく、自分が提案した朝食のホットサンドが作れる。皆の分の肉を焼いてあげて、テントの中に起こしにいきます。でも、明け方近くまで騒いでいた三人です。

【フリスビー男】「おはよ。俺、朝食べない派なんだよね」

【ボーナス80万円男】「俺も、二日酔いで、ちょっと無理だわ」

【チンコ痒男】「お前、せっかく作ったんだから、俺らの分も食べていいよ」

得てしてそんな反応でしょう。

三人分のホットサンドの処分に困っているところ、皆が起きて、昨日遊んでいた女の子のところに連絡先を聞きに行きます。その間、責任者であるあなたは、テントをひとりで片付けることになるんです。

——……。

極端な話に聞こえるかもしれませんが、意外とありうる話なんです。グループキャンプって、こういうことが起きる。集団で行動すると、自分の思い通りのキャンプはなかなかできないし、声の小さい人は、なんでも押しつけられがちになるんです。

僕も、昔はグループキャンプで参加者全員が入れる大きなテントを揃えたことがあるし、送り迎えもやっていましたから。せっかくの休日が「他人のおもてなし」で終わっちゃうんです。

ちなみに、おもてなしをしても、割り勘になります。あなたが酒を飲まなくても、アルコール込みで割り勘になって、入場料以外で3000円くらい取られます。

しかも、あなたが車を出したのに、なぜかガソリン代と高速料金はぬるっと割り勘にならず自腹になったりもするんです。

首都高速
写真=iStock.com/TOSHIHARU ARAKAWA
※写真はイメージです

こうして日曜日の夕方、やっと家に帰ってくる。テントの中で嗅いだバニラの香りをまだ覚えている中、インスタで若い女が踊る動画を見て、エロ動画を見て、猫動画を見る。あなたは耐えられますか?

——耐えられません。「土日を使って、自分はいったい何をしていたんだ?」と自己嫌悪に陥いると思います。