親の決まり文句「勉強しなさい」は言うだけムダ

3 比較しない、焦らない

子供の成長は、他人とではなく本人の過去と比べることが大切だという。学校の評価の一つである、通知表に一喜一憂するのもこれからの時代にはミスマッチだ。子供の成長も得意なこともさまざま。学校の枠に必ずしも合わせる必要はないのだ。

「私が取材した活躍しているお子さんは学校の宿題が苦手で、それを先生に相談したケースがありました。探究的な学びが好きな一方で、決められたことをこなすだけの宿題をする気にはならないという子です。お子さんの性格や育ってきた環境などを伝え、学校に個別対応してもらうことができないかを伝えてみてもよいでしょう。そのとき一方的に主張を押し付けるのでなく、歩み寄る気持ちで味方になってもらえるように先生方とコミュニケーションを取ることが肝心です」(中曽根さん)

「今の社会で活躍している人のなかには学校が合わなかった人、嫌いだった人が大勢います。必ずしも学校の勉強が合わないからと悲観する必要はありません。むしろその選択のほうがよかったと言えるよう、さまざまな選択肢を探して長い目で見守りましょう」(工藤さん)

▼学校の課題についていけないときの声かけ例
「自分のペースでいいよ」

4 あれこれさせない

「勉強しなさい」「学習習慣が大事」は親の決まり文句だが、「必要のない勉強は時間を奪うだけです。必要だと思う勉強を自分の意志でできる子に育っていくことが理想です。あれこれやらせてばかりいると、意味も考えずに、言われたことをこなすだけの子供になってしまいます。いったんそうなると主体性を取り戻すのは大変です」と工藤さん。

習い事もしかり。親がやらせたいことをあれこれ詰め込むのは禁物だ。

「例えば、プログラミングや英語が重要だと聞くと教室に通わせてスキルを身につけさせなきゃと焦るかもしれませんが、スキルは子供自身が必要と感じたときにいくらでも伸ばせる。それよりもスキルをつける際の土台となる好奇心や意欲を育むことが子供時代は大切です」(中曽根さん)

ヘッドセットをつけてノートパソコンで勉強中の少女
写真=iStock.com/miya227
※写真はイメージです

中曽根さんは好奇心や意欲を育むために、何も制限されない、好きなことをできる時間をつくってやってほしいという。

「ノーベル賞を取った人たちは子供の頃に余白時間をたくさん持っていました。親が心がけたいのは集中している時間を妨げないこと。これに尽きます。そのときに子供が何を好きなのかを観察して、その事柄をちょっと広げてやったり、時には一緒に面白がって調べたり。子供の興味に寄り添い、少しだけサポートする感覚で十分です」(中曽根さん)

▼子供が夢中になっているときの声かけ例
「手伝うことある?」
工藤勇一さん
私立横浜創英中学・高等学校校長
千代田区立麴町中学校の校長時代には担任制廃止など数々の教育改革を進めた。教育再生実行会議委員、経済産業省「『未来の教室』とEdTech研究会」委員などを務める。
中曽根陽子さん
教育ジャーナリスト
マザークエスト代表。海外の教育視察も行い、クリエイティブな力を育てる探究の学びを提唱。近著に『成功する子は「やりたいこと」を見つけている―子どもの「探究力」の育て方』(青春出版社)がある。
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