弁明の余地ない「一発アウト」

発言の何がどうアウトだったのか、なぜ牛丼を若年層の女性に食べてもらう企画として「生娘シャブ漬け戦略」という言葉を用いるような人物が業界でも有名な「マーケター」とされ、日本最大の牛丼チェーンの企画マーケティングを担う執行役員の地位にいたのかなどは、これまでさまざまなメディアで評され、語られた。

発言の問題は基本的に3点に整理されるだろう。

個人的資質の問題:違法行為、若い女性に対する性暴力を連想させる浅薄で不適切なワーディングを職業的な公開の場で口にする無神経と無配慮
社内ポジション上の問題:執行役員として経営側に参加している自社の商品を「安物」と貶め、社のブランドをマーケティング戦略担当責任者が自ら毀損
業界の体質的問題:それを有料マーケティング講座での講義内容とすることに不適切さを感じない職業的傲慢、マーケティングなるものが経験論のみで語られ、一発当てた人材がスター化する業界構造

「一発アウト」との言葉が硬軟さまざまなメディアに躍った通り、そこに弁明の余地はなかった。

なぜ男性告発者はいなかったのか

ただ、この問題が露見し、ここまで大きな影響をもたらすに至ったきっかけは、受講者女性が発言に不快感を覚え、抗議したツイートだった。講義後に、講座の運営にも意見したとのことで、その人物に対しては「よくぞ」と勇気を称える論調が強い。

だが一方で、それを同じ空間で聞いていた男性たちは何をどう感じていたのだろうかという疑問はある。講座会場では、その場の当惑の空気はあったという。だがすぐに直接の抗議に出た男性はいなかった。この問題が炎上したあとのSNSでも、伊東発言の何が誰をどう傷つけるか(失礼か)とか、伊東氏個人のキャリアや業界体質や出身母体の大企業を「分析」して批判する男性の投稿はあまた存在した。でも、女性と同様に端的に「キモい」「言語道断」と問答無用で断じるものは少なかったように思う。

男性たちの「分析」の言葉ににじむ感情は、「けしからん、自分はそうじゃない、そういう男は迷惑だ」などというものよりも、「あいつ、しくじったな」「自分達はうまくやるにはどうしたらいいか」「お互い気をつけましょう、発言は慎重にね」という空気が個人レベルでは強かった。

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写真=iStock.com/loveshiba
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