1年目で辞める新入社員たちには、どんな事情があるのか。年間1000人以上の社員と面談をしている産業医の武神健之さんは「働き出してから発達障害とわかるケースや、入社早々から心に壁を作ってしまうケースがある。いずれにしても、先輩社員は産業医と連携を取ってほしい」という――。
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「夏までに退職を考える」新人は毎年いる

コロナ禍3年目、新型コロナ感染症に伴うまん延防止等重点措置も終わり、3年ぶりにコロナ前のようにリアルな入社式で新年度が始まりました。まだ着慣れないスーツ姿、時に見せる少し不安なまなざしに初々しさを感じる新入社員たちですが、皆、やる気と希望に満ち溢れた顔をしています。

巷では、入社数日でやめてしまったりする社員もいるようですが、私が産業医として勤務する会社では、入社してすぐにやめてしまう新入社員は昨年もいませんでした。しかし、夏までに退職を考えるに至る新入社員たちには毎年遭遇します。

そこで今日は、夏前に退職を考える新入社員たちについて3人の産業医面談事例からお話ししたいと思います。

何度注意しても「電話のメモ」ができない

1人目は、コロナ前に新入社員だったAさんの話です。

Aさんが上司に促され産業医面談に来たのは6月でした。新入社員研修は問題なく過ごし、予定通り営業部に配属されたものの、最近、出社前は胃がむかむかし吐き気に悩まされ始めたとのことでした。

人事が部門から聞いた話では、彼女は、先輩社員に同伴して行くクライエント訪問先での対応は明るくハキハキしていて高評価だったそうです。しかし、社内での電話対応業務においては、電話をしてきた人の名前や部署、用件内容をメモ等できず、何度注意しても改善が見られず、初めは優しく指導していた先輩たちもだんだん呆れてきているようだとのことでした。偏差値の高い優秀な大学出身であることから、地頭が悪いわけはなく、本人の業務の好き嫌いや、やる気の問題だと上司は考え始めているとのことでした。