休職しながら第2新卒枠で転職活動

自分の体調が悪いことは認めるものの、原因は職場環境にあるのだから自分が病院にかかっても自分には治療すべきところがない、だから診察に行く気にはならない。元気になっても、あの環境を変えてくれない限り安心して復職できるとは思えない。自分にも年の近い先輩社員をつけるか、そのような部署に異動させてもらえるべきだ等々、彼女の訴えはどんどん続きました。

彼女は、休職しながらも診断書の発行目的以外には診察には行かず、体調が良くなると、第2新卒枠で転職活動をしていました。当然、このような社員に復職してほしいという気持ちは会社側も薄く、この状態を黙認していました。最終的に秋に他社での採用が決まり退職していきました。

その後音沙汰はありませんが、これもまたwin-winの結果と言えるのかもしれません。産業医には自分の無力さが残るだけでした。

5~6月に違和感を自覚、6~7月には社内で話題に

毎年、実際に働き出してから発達障害であることがわかる若者がいます。また、自分ができていないことを自分のこと=自責として受け入れられず、原因を周囲に=他責にすることで、心に大きな壁を作ってしまう新入社員もいます。

新入社員
写真=iStock.com/byryo
※写真はイメージです

多くの場合、その人たちは、新人研修が終わってから5~6月頃には何らかの違和感を自覚、6~7月には社内でも問題になり上司たちに知れ渡り、夏前には人事にも伝わってきます。

私のクライエントの多くは、たとえ病気になっても、やる気のある新入社員たちには概ね、寛大で協力的なことが多いです。しかし、その先、医療にかかったり、退職したり、同じ会社で頑張ったりと経過は様々です。個人的経験から言うと、これは当事者本人の育ちと性格による部分が大きいと感じます。そしてそればかりは、産業医としてもどうにもならないと感じてしまうことです。

先輩社員の方々はぜひ、新入社員に何かある時は、いつでも産業医と連携をとってほしいと思います。そして、その新入社員の性格や特性を捉え、協力して上手に育てていただければと思います。そうすればきっと、数年後には立派な社員になってもらえるのではないでしょうか。

以上、夏前に退職を考える新入社員たちについてお話をさせていただきました。少しでもお役に立てば幸いです。

【関連記事】
「1日2個、切ってスプーンで食べるだけ」メンタル不調に効く身近な"あの食べ物"
「あの人には注意したほうがいい」部下をメンタル不調に追い込むヤバい上司がよく使う言葉3つ
疲れているのに眠れない…産業医が見ればわかる「4月にメンタル不調に陥りやすい人」3つのパターン
就活生の価値観は激変…「待遇にこだわる人とは働きたくない」人事部の投稿が大炎上したもっともな理由
「このまま平凡な会社員で終わるのか」そんな悩みをもつ人に勧めたい"バットマン生活"の愉しさ