「発達障害の気配」を感じてクリニックを紹介したものの…

本人も電話対応等ができていないことは認識しており、人一倍努力しているができないと涙目で言っていたのが印象的でした。できないことに落ち込み、怯え、クライエント訪問が予定されていない日などは、前日はうまく眠れないことが出てきて、また、次第に朝は出社が怖く感じるようになってきている状態でした。

聞いてみると、学生時代から予定管理やマルチタスクは苦手で、友人たちに迷惑をかけてきたけれども、毎回持ち前の明るさと笑顔のコミュニケーションでなんとかなってきたようでした。

産業医の私は彼女に発達障害の気配を感じつつ、現在の症状にも治療が必要と判断し、その方面に強いメンタルクリニックの受診をお勧めしました。受診を約束して産業医面談を終えたものの、その後いつまでたっても産業医面談に現れず、数カ月後に人事に聞いてみると、「あぁ、彼女、夏前に辞めました。部門もあまり積極的には引き留めなかったようです」とのこと。

今はきっと、自分にあった仕事についてくれていることを願うばかりです。

メンタルクリニックで判明したADHD

2人目はコロナ1年目の7月に面談に来たB君です。

彼は入社早々、新入社員研修が終わる頃には、遅刻魔、提出物の締め切りを守れない、集中力にムラがあるとの評価となっていました。上司たちに注意され、何事もメモするようにしたものの、メモしないでいいと判断したものに限って予定等を忘れてしまい、落ち込み、5月中旬には睡眠障害や気分不快を自覚し、自らメンタルクリニックに通い始めました。

医師は、将来的に更年期と治療について患者に話します
写真=iStock.com/wutwhanfoto
※写真はイメージです

クリニックで行った心理テストでADHD(注意欠如・多動症)の診断となりました。彼自身はADHDの特性について聞けば聞くほど、過去の自分に当てはまるものばかりで、すぐにそのことに納得できたようでした。内服治療を始めたものの、毎日24時には寝て翌日に備えるべきと理解はしているものの、夜な夜な趣味のゲームや3Dプリンターでの制作などに過集中してしまい、寝るのは3時頃になり、翌日9時からの仕事に度々遅刻することが続いていました。

先輩も上司もよくフォローしてくれているものの、仕事がうまく行かない日は特に頭がぼーっとしたり、また、気分の落ち込みもどうにもならないため、退職した方がいいのではないかと相談しに来ました。