韓国政府にのしかかる急速な少子高齢化
他の東アジア諸国と比較してみよう。各国における65歳以上人口の割合の推移で明らかなのは、日本において、世界、そして他の東アジア諸国に先駆けて進んだ高齢化のトレンドに、韓国が急速に追いつきつつあることであり、また、やがては追い抜いていくことである。2020年の段階で既に韓国における高齢者人口の割合は15%を超えており、1990年代後半の日本の水準に等しくなっている。
背景には韓国における極端な少子高齢化が存在する。韓国の2020年の合計特殊出生率、つまり1人の女性が生涯に産む子供の数は0.84。やはり少子高齢化の深刻さが指摘される日本の合計特殊出生率は1.34だから問題の深刻さがよくわかる。
こうした状況は、現在の韓国政府の福祉政策にも影響を与えることになる。急速に進む高齢化は政府にとって、年金や医療費などの負担が将来増加することを意味している。しかし、かつて通貨危機を経験した韓国政府は、日本が行っているような膨大な赤字国債の発行には、依然、一定のためらいを持っている。
若者の雇用機会はさらに奪われていく
だからこそ、ここにおいて韓国政府が選択しているのは、高齢者により多くの雇用を与えることである。多くの年金などを与えることができない以上、意図的に高齢者の労働機会を作って収入を確保しようという訳である。
そのための最も主要な手段は、企業の定年退職年齢の引き上げである。結果、韓国では近年まで大手企業で多数を占めていた55歳の定年退職年齢が、一挙に65歳まで引き上げられるようになっている。
しかし、このようないささか乱暴な韓国政府の施策は結果として、ただでさえ限られている雇用を更に高齢者の側に振り向けることとなる。結果、労働コストの負担に限界がある企業は、新規採用を控えることにならざるを得ない。つまり現在の韓国における若年者の雇用環境悪化は、人口の高齢化とそれに対する韓国政府の政策の結果でもあるのだ。