文在寅政権は貧しい人の味方のはずだが…
不動産価格の上昇は、お金持ちを豊かにさせる一方で、貧しい人々をさらに貧しくさせ、貧富の格差が拡大する。
だから、今の韓国の人々にとって「不動産価格の上昇」は、単にそれだけに止まらない意味を持っている。つまりこの現象は、今日における韓国社会における格差の拡大を象徴するものとして現れているのである。
そしてさらに皮肉なのは、この現象が、本来なら福祉政策に熱心な筈の「進歩派」政権の下で、起こっていることである。本来なら、貧しい人々のことを第一に考えるべき進歩派政権の下で、豊かな人達がますます豊かになる一方で、貧しい人々がますます貧しくなっている。だからこそこの状況に、かつて政権に期待し、文在寅に投票した一部の人々は強い失望を覚えるに至っている。
さて、それではその「一部の人々」とは一体誰のことなのだろうか。その答えは、この政権が出発した時点と、それから4年半以上を経た現在の時点での間で、誰がこの政権の支持から離れたかを見ればわかる。
紙幅の関係上、その分析結果を細かく示すことはできないが、この間に明確に政権支持から不支持に転じたグループは1つしかない。それは20代以下の若い人々だ(韓国では2021年現在で18歳以上に選挙権がある)。
受験競争を勝ち抜いても3割が就職できない
背景にあるのは、この世代の極端に高い失業率である。時に雇用問題の深刻さが指摘される韓国であるが、実は労働者全体の失業率は4%と、他の先進国に比べてそれほど高い水準にある訳ではない。むしろ問題は失業者が特定の世代、つまりは20代以下に集中していること、そしてさらにはこの世代の多くが、不安定な非正規雇用の職に就いていることである。
この状況が今の若年層にとってどれだけ深刻なのかを理解してもらうために、あるデータを紹介しよう。ソウル市内の主要大学の卒業時点の就職率の推移をみると、その低さに驚く。2018年の就職率を挙げてみると、ソウル大学70.1%、延世大学70.1%、高麗大学70.3%、成均館大学77.0%、梨花女子大学62.1%。激しい受験戦争で知られる韓国であるが、ソウル大学のような超名門大学の卒業生であっても、3人に1人に近い人が、就職できない状況なのである。
一方、維持就業率(就職から1年後も同じ職に就いている人の割合)は、ソウル大学89.8%、延世大学87.5%、高麗大学91.0%、成均館大学92.6%、梨花女子大学82.6%。せっかく就職できたのに、1割、2割の人が1年以内に退職しているのである。