2012年、要注目なのが「デジタルシニア」。60歳以上ながら、デジタルギアを自在に操る新世代だ。

起床してすぐにパソコンを立ち上げ、ツイッターやネットショッピング、ユーチューブへの投稿も朝飯前。スマホやiPadを持って外出し、旅行前に目的地をグーグル・アースで下見して、「このお寺はこの方角から見るのがベスト」と事前調査も。仕事経験を生かせる「知的なゲーム」としてネット株取引も楽しむ。例えばそんな人物像だ。

ツイッター歴2年。つぶやくだけでなく夕飯の調理の様子を動画でアップするなど工夫。iPadも購入し、アプリ、電子書籍もすでに購入済み。

そうした進んだシニア層で“アイドル”的存在になっているのが、埼玉県在住のミゾイキクコさん(77歳)。パソコン歴13年、今はツイッターに凝っていて日に何十回もつぶやく。料理、天気、園芸など話のネタは「平凡」なのに、何とフォロワー数は約1万7000人。「反響が最も大きかったのは戦時中の空襲、疎開、食糧難、生活物資の不足……といった思い出話ね。『もっと知りたい』という声をたくさんもらい、張り合いが出ました」(ミゾイさん)。

電通総研メディアイノベーション研究部の研究主幹、長尾嘉英氏によれば、デジタルシニアは非デジタル層より社交性が高く、消費意欲も大きいという。

例えば、日用品大手ライオンの健康食品通販サイト「ウェルネスダイレクト」利用者の3割は60代以上でリピート率も高いらしい。また、ネットベンチャー、ウェルスタイルが運営するSNS「ウェルノート」は、祖父母が子供・孫など家族間で健康情報を含めて頻繁にやりとりできる仕組みが好評だ。

団塊世代が65歳を迎え始め、シニアマーケットはさらなる拡大が予想されている。「今までは若者がトレンドをつくりましたが、今後はネットを駆使する元気なシニアからトレンドが生まれ、それが若者へ普及する“逆流現象”が起きる可能性がある」(長尾氏)。21世紀の老人はイノベーターか。

※すべて雑誌掲載当時