プーチン氏の後継選びは誰に?

プーチン氏の続投説は、2020年の憲法改正で過去の任期をリセットし、2期12年の任期延長を可能にした時点でささやかれていた。最長6期、2036年までの続投説もあるが、36年には83歳で、健康との闘いになる。

一方で、プーチン氏は昨年6月、国民とのテレビ対話で、「後継者を推薦するのは私の責任だ。祖国を指導するにふさわしい人物を指名する日が来ることを望む」と述べ、後継者擁立を考えていることを示唆した。

これを受けて、ロシアのメディアでは一時、後継者問題が議論され、例えば、ロシア誌「ソベセドニク」(21年10月18日)は、有力後継者ランキングとして、①ミシュスティン首相②ショイグ国防相③ソビャーニン・モスクワ市長④パトルシェフ安保会議書記⑤ラブロフ外相⑥ナルイシキン対外情報庁長官⑦キリエンコ大統領府第一副長官⑧デューミン・トゥーラ州知事⑨グレフ貯蓄銀行頭取⑩バストルイキン捜査委員会委員長⑪ボロディン下院議長⑫ゾロトフ大統領親衛隊長官――の12人を挙げていた。

プーチン氏が後継指名する場合、最有力候補はショイグ国防相だろう。30代から非常事態相を務め、ロシアではプーチン氏に次いで知名度の高い政治家。近年は毎夏、プーチン氏とシベリアで夏休みを過ごし、国営テレビがその模様を大きく報道する。ただし、65歳と高齢で、少数民族出身の点が障害になる。長年有力視されたメドベージェフ前首相は、後継レースから脱落したようだ。

引退前に達成したいウクライナとベラルーシ問題

プーチン氏の続投は既定路線とする見方も、専門家の間に多かった。

政治学者のセルゲイ・メドベージェフ氏は昨年9月、オンライン会見で、「後継者を議論しても意味がない。おそらくプーチンは死ぬまで続けるだろう。使命感があり、変化を恐れている。事実上の終身制だ」と話していた。

調査会社「R.Politik」のタチアナ・スタノバヤ代表はカーネギー財団モスクワ・センターへの寄稿(21年12月27日)で、プーチン氏は内政、外交でやるべきことを明確に区別しており、内政は憲法改正で目標の「一元支配」を完了したが、対外的には2つの戦略プロジェクトが残されたとし、「ウクライナの中立化」と「ベラルーシのロシア統合」を挙げた。2つの戦略課題を達成して引退する見通しという。

ロシア国際政治学会の大御所、ドミトリー・トレーニン氏も米誌「フォーリン・アフェアーズ」(21年12月28日号)で、ウクライナ、ジョージア、モルドバを北大西洋条約機構(NATO)から排除し、ロシアが冷戦終結後に被ったダメージを修復するのが、2024年選挙に向けた有益な実績になると書いた。