1万4000人を犠牲にしても諦めない“レガシー”
こう見てくると、今年10月で70歳になるプーチン氏は長期政権のレガシーを意識し始めた。それは内政ではなく、外交・安全保障であり、ウクライナ問題に集約されるようだ。
プーチン政権は2014年のウクライナ危機で、クリミア半島を電撃的に併合し、東部のドネツク、ルガンスク両州の一部で親露派勢力に独立を宣言させた。東部の紛争ではこれまでに1万4000人が死亡し、一進一退の勢力圏争いが続く。
使命感の強いプーチン氏にとって、ウクライナは「未完の革命」であり、これを放置したまま退陣できないと考えているようだ。
当面は、軍事圧力で威嚇しながら交渉を進め、ウクライナのNATO加盟を恒久的に阻止するとともに、2015年のミンスク合意の履行を狙っているかにみえる。ミンスク合意は東部親露派地域への自治権付与やウクライナの連邦化をうたっているが、ゼレンスキー政権はウクライナに不利として無視してきた。
軍事侵攻は最後の手段であり、避ける可能性が高いものの、最終的にはプーチン大統領の決断にかかってくる。
社長や閣僚に…2世への「利権継承」が始まっている
プーチン氏が「終身統治」を目指すもう一つの理由に、政権エリートの利権継承という要素があるかもしれない。政権を取り巻く要人や新興財閥のトップは皆70歳前後であり、男性の平均寿命が67歳と低いロシアでは、「後期高齢者」だ。超富裕層となった彼らの子弟も、閣僚や国営企業幹部など有力ポストに就き始めた。
例えば、プーチン氏の次女、エカテリーナさんは最近、国立モスクワ大学に設置されたAI(人工知能)研究所長に就任。すでに億万長者で、同大学の若手研究者養成プロジェクトの理事長も務め、新興財閥が財政支援する。
長女のマリアさんは医学博士で、小児医療の専門企業を経営し、メディア露出も増えた。