コロナでも開拓が進まない日本……EC化率は8%止まり
コロナ禍でECは大きく伸びた。
経済産業省の調査によると、日本国内における2020年のEC市場規模(物販系)は12兆2333億円で前年比21.7%増となった。ここ数年のEC市場の伸び率は毎年1桁台で続いていたことを考えると急激な伸びを見せた年だった。
また、小売業全体の商業販売額の増減率は前年比0.9%増だったことからも、消費者のEC需要が拡大していることが分かる。
しかし日本のEC化率は前年から1.32ポイント増やしたものの、まだ8.08%しか開拓できていない。先進国の中では日本のECは遅れているのが現状なのだ。
ここで米中両国のEC市場規模(2020年)も見ておこう。
・中国
市場規模:11兆7600億元(約208兆1520億円、前年比10.6%増)
EC化率:30.0%(前年比3.9ポイント増)
・米国
市場規模:7879億ドル(約89兆4270億円、前年比32.4%増)
EC化率:14.0%(前年比3.1ポイント増)
米中は2桁増で市場規模を拡大させていた。日本は市場規模もEC化率も大きく差をつけられている。日本はコロナ禍による巣ごもり消費の定着で急拡大している市場をほとんど取り込めていないといえる。
しがらみに悩むメーカー幹部
日本国内のEC市場開拓率が低い背景には、日本独特の商慣行の構造的な「しがらみ」の問題がある。メーカーの中間流通業者への忖度がEC推進の障壁になっているケースが多い。
現状、メーカーが消費者へ商品を届けるまでに、商社などの卸売業者や百貨店、ドラッグストアなどの小売業者が中間流通として複雑に絡み合っている。
EC化を推進しようとしても、既存の取引先との古い付き合いや依然として高い実店舗売上比率(日本全体では約92%)もあり、中間流通業者の影響力は大きい。
EC側で価格を大きく下げるとすぐさま小売店のバイヤーから指摘の連絡が入る。小売店も生き残りに必死だ。
こういった状況もあり、実店舗と同様に卸売などを中継した旧来の商流構造をECでもなぞってしまうメーカーが多い。そのためEC化に向けた「戦略がない」「人材がいない」「ノウハウがない」といった課題が解決されず放置されたままとなっている。
旧来のメーカーがこのような既存のしがらみや商習慣から脱却できないまま、片手間的にECに取り組んでいる間、近年「D2C(Direct to Consumer)」と呼ばれるECを通して消費者に直接商品を販売するビジネスモデルが、スタートアップ企業を中心に盛んになっている。