旧来の日本のメーカーでは前述のとおり、国内の既存中間流通業者の存在感が高く、コントロールできない領域があまりにも多い。そのため消費者との距離が遠く、新商品の市場投入スピードも遅くなる。

さらに日本中でDX人材不足が叫ばれているとおり、社内にデジタル人材が育っておらず、ECやデジタルマーケティングのノウハウの蓄積もできていない。

なお、国内でもD2Cメーカーは中国メーカー同様の強みを持ち、従来の日本メーカーの弱点をついて、スピードとダイレクトな消費者とのつながりによる商品開発の力で成長をしてきている。

従来の慣習から抜け出せなかった油断

結論として、少々厳しい言い方となるが、中国発の越境ECがあふれてしまった本当の理由は従来の慣習から抜け出せなかった日本企業の油断が招いたと言っても過言ではない。

EC事業の伸びは実店舗小売と比べると高く見えるので安心しているメーカーがいるが、実はEC市場全体の成長スピードにはついていけておらず、市場内シェアはどんどん中国メーカーや一部の国内D2Cメーカーに食われてしまっている実態を見落としている。特にAmazonではそのケースが多いので注意が必要だ。

なお、政府も危機感を持って支援策を講じている。今年から10月10日を「デジタルの日」と定め、デジタル庁を中心にECでのセールやキャンペーン、イベントなどの開催に取り組んだ。さらに今年度の補正予算にも、事業者に対するEC化支援策を盛り込んでいる。

成果はこれからとなるが、政府の支援策は企業がECサイトに出店することやECサイトを構築するスタートラインに立つところだけの支援で終わっており、その先の成長戦略を描けていない課題がみられる。

本当に必要なのは、メーカーと消費者のコンタクトポイントをネット上に増やし継続的に運用し続けることであり、売り上げ増のための工夫やノウハウを伝える人材の確保・育成・投資などへの支援も今後期待したい。

アマゾンのダンボール
写真=iStock.com/killerbayer
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変化への対応力が日本メーカーに試されている

さて、従来の日本のメーカーが本質的に持つ強みはこれからの時代全く通用しないのだろうか。

日本EC市場に進出している中国メーカーのすべての企業がきちんとした商品を提供しているとは限らない。いわゆる「やらせレビュー」「サクラレビュー」といった不当な手法で高評価の書き込みを増やし販売を誘発するようなやり方をする企業も少なくない。

Amazonではこの事態を大きく問題視しており、これら不当なレビューに対する対策に、年々力を入れ厳しく取り締まりを行っている。