12月22日、大阪で初めてオミクロン株の市中感染が確認された。現状、「感染力が強いものの、症状は風邪に似ており重症化が少なく、死者も少ない」と報じられている。医師の和田秀樹さんは「感染者はケタ違いで増えるでしょうが、大騒ぎする必要はない。ただ、コロナウイルスの感染症法の分類を現在のままにした場合、ひどい医療逼迫が起き、保健所がパンクし、医療を受けられない人でパニックが起こる恐れがある」と警鐘を鳴らす――。
WHOが懸念している新型コロナのオミクロンまたはB.1.1.529株
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医師「オミクロン株は普通の風邪に近づいている。大騒ぎするな」

私はこの12月、アメリカのCDC(疾病予防管理センター)勤務を経て、厚生労働省の医系技官として検疫医専門職も歴任した木村盛世さんとユーチューブチャンネル(ヒデキとモリヨのお悩み相談)を開くことになった。

その収録で、木村さんは、なんで世の中の人がこんなにオミクロン株のことを騒ぐのかと疑問を呈していた。確かに、オミクロン株は世界的な流行の兆候を示している。イギリスでは12月21日までにオミクロン株に感染した人が累計6万人を超え、ロンドンで検出される新型コロナウイルスの約90%がオミクロン株とされ、アメリカのCDCの発表でも全米でコロナ感染の73.2%がオミクロン株とされている。

この感染力は驚異的なもので、これが最初に見つかった南アフリカの大病院のCEOのデータでは、デルタ株の4.2倍とされる。

日本でも次々と感染者が見つかり、12月22日には大阪で渡航歴のない家族3人が感染した。都内や京都でも24日、同じく市中感染が確認された。

これによって第6波を懸念する声も高まっている。実際、欧米のものすごい感染の広まりを見る限り、日本でもかなりの数の感染が生じる可能性は大きい。

いっぽうで、重症化が少なく、死者も少ないという別の側面も報じられている。イギリス保健当局の12月18日の発表では死者は7人、アメリカでも死者が出たがこの原稿を書いている時点で1人だ。以前の死者数と比べると隔世の感がある。

このオミクロン株が初めて見つかった南アフリカは、ワクチン接種率が25%で医療体制も欧米ほどはレベルが高いとは言えないのに、それによる死者は報告されていない。

症状のほうも頭痛や体の痛み、疲労感、発熱といったものだ。これに対して、木村さんは、「要するに普通の風邪に近づいている」と解釈している。それを大騒ぎして、市民生活に規制を加えようとしていることに疑問を呈しているのだ。

ウイルスは変異を繰り返し、それによって自分たちの生き残りを図ろうとする。一般的に弱毒化して感染力を強くすることが生き残りには重要なストラテジーとなる。宿主を殺すと自分も死なないといけないので、弱毒化してなるべく宿主を殺さないようにする。数を増やしたほうが淘汰されにくいので、感染力は高まる。

通常の風邪にしても、インフルエンザにしても、そのような形になるので絶滅しないし、毎年のように勢力を広げる。