医師「このままでは医療逼迫、保健所パンク、受診困難な人多数」

アメリカで公衆衛生を学んだ木村さんは、「普通の風邪で、経済や社会活動をここまで抑制してもいいのか」という意見を持っている。

精神科医であり、長年、老年医学に携わってきた私も同感だ。普通の風邪で自粛生活が続けば、うつ病が増えるのに伴い自殺者も増え、高齢者の歩行機能や認知機能が落ちて、数年後に要介護状態になる人が激増することは容易に想像できる。

もちろん、オミクロン株のケタ違いの感染者数の予想が当たるかどうかはわからない。

マジックで不織布マスクにオミクロンの文字、注射器と手袋
写真=iStock.com/Helin Loik-Tomson
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ただ、感染者がかなりの数で増えるのは、おそらくは確かだろう。問題は、その際に今のままの医療体制ではかなりひどい医療逼迫ひっぱくが起き、保健所がパンクし、医療を受けられない人でパニックが起こる可能性が高いということだ。

この元凶の大きな原因になっているのが、「新型コロナウイルス」の感染症法上の分類が、日本では実質2類相当(下手をすると1類に近い)になっていることだ、と木村さんは指摘する。

2類というと、はるかに致死率の高いSARS(重症急性呼吸器症候群)やMERS(中東呼吸器症候群)のレベルである。この場合、保健所は行政などへの届出だけでなく、入院や検査の管理を行わなければならず、また濃厚接触者の割り出しもしないといけない。

これを通常のインフルエンザと同じ5類まで下げれば保健所の負担も大幅に減り、一般の病院での対応も可能になる。法律上、医師が診察の拒否をすることもできなくなる。そうした効果で、コロナ治療のキャパシティが大幅に増えるのは間違いない。

国の当局は、感染症法上の分類を実質「2」から「5」へ移行することを早急に検討すべきだ。