医師「感染した人の医療の受け入れをしっかりすることが置き去りだ」
木村さんが最も問題視するのは、「100%の水際対策」など現実には不可能なことに過度な期待をするより、かかった人の医療の受け入れをしっかりすることが置き去りにされていることだ。
2009年の新型インフルエンザの検疫に携わった木村さんは、そのウイルスが問題になる前に無症状のすり抜けがいくらでも起こるし、入ってきてしまったらどんどん感染が広がるので、100%の水際対策など不可能だと指摘している。
この意見に私も賛同する。感染力が強くて、無症状の人が多いとされるオミクロン株ではなおのことだろう。
私の予想が杞憂に終わることを望むが、今回のオミクロン株が「普通の風邪に近いもの」だとすると感染者数は、ケタ違いのものになる可能性がある。
健康保険組合連合会の2012年(平成24年)度版のレポートによると、組合員1243万人中、風邪で医者にかかった人は約45万人だという。日本の人口で考えればおよそ450万人ということになる。医者にかかるような症状が出た人だけでそれだけの数だから、医者にかからなかった人を含めた感染者数はその10倍くらいはいたのではないか。
つまり、今回の感染力が強いオミクロン株に関しては、無症状者を含め4000万人レベルの感染者に達する可能性もある、と予測している。
例年、普通の風邪でもこじらせて亡くなる人は多い。死因の統計の「肺炎」の中には風邪をこじらせた結果、という高齢者などもかなりの数にのぼる(肺炎で年平均10万人の方が亡くなっている)。
人は、コロナ禍以前からそうした感染や死のリスクを抱えている。