薬には副作用・副反応がある。精神科医の和田秀樹氏は、「薬の副作用が一因となって自分や人を傷つけようとしたり、体は起きているが寝とぼけた状態になって車を暴走させたりすることがある。警察やメディアは容疑者などが日頃飲んでいる薬を調べるべき。また、コロナワクチン接種後の死亡者を巡ってもワクチンの副作用・副反応との関係などをもっと開示するべきだ」という――。
真っ赤な風船を持って笑みを浮かべるピエロの絵
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“京王線ジョーカー”事件の25歳容疑者の「薬の履歴」を調べよ

10月末、東京都内を走る京王線の電車内でナイフを用いて乗客17人に重軽傷を負わせ、油をまいて火を放った25歳の男が殺人未遂容疑で逮捕された。精神科医である私に対して、この件に関して週刊誌やテレビ局などから取材申請があったが、なるべくコメントを差し控えてきた。

書籍『嫌われる勇気』(ダイヤモンド社)で日本でも有名になった精神科医・心理学者のアルフレッド・アドラーは目的論で知られる。同じく精神科医のフロイトなどの精神分析では、非行少年の非行行為について、子供時代の育て方とか生まれつきの攻撃性など原因に注目する。

それに対してアドラーは、原因に注目することでは、相手は変わらないので、むしろなんでその行為をやるのかという目的に注目する。

その目的が「目立ちたい」「注目されたい」というものであれば、周囲が騒いだり、叱ったりするのは、むしろ相手の望みをかなえてしまうので逆効果と考える。

要するにアドラーの考え方では、目立ちたいから事件を起こす人を大報道するのは、その目的をかなえることになるし、その犯人が逮捕されることによって、同じように目立ちたいから事件を起こす人の事件を誘発することになる。

現実に、今回の事件は次々と模倣犯を生んだ。

11月8日に九州新幹線車内で液体をまく、ライターで火をつけた69歳の男は(京王線の事件の)「まねをしようと思った」と供述しており、翌日には宮城県で保育施設に刃物をもって現れ逮捕された31歳の男は、「小さな子供を殺し、捕まって死刑になるためにやった。邪魔してきた職員も殺すつもりだった」などと供述している。

これを社会病理と見るか、容疑者たちのパーソナリティの問題とみるかは、精神科医である私にとっても判断が難しいところだが、一点、確実に言えることがある。

騒ぎを起こして多数の人間を殺し、死刑になることで自殺する「拡大自殺」をした者に対しては、警察などが服用していた薬を調べるべきである。