毒舌でも好かれるスゴい心理作用

自分を中心にした考えで生きている「自己中」、そこにはポジティブな面とネガティブな面があります。自己中でもモテる人は、それが裏目に出ていない人。つまり、ポジティブな面だけが印象に残る人です。

晴香葉子
晴香葉子 Yoko Haruka 心理学者・作家。早稲田大学オープンカレッジ心理学講座講師。専門は心理学・コミュニケーション学。研究を続けながら様々な角度から情報を提供する。メディアでの解説・監修実績多数。著書に『人生には、こうして奇跡が起きる』ほか。

ネガティブな面は、たとえば周囲に迷惑をかけることが挙げられます。自分を優先するあまりに、遅刻をしたり、約束を反故にしたり、といったことがあると、「単にわがままな人だな」と信用を失ってしまいます。また、自己主張が過ぎて、他人を言葉で傷つけてしまうような人も、ネガティブな面だけが印象に残ってしまうタイプの「自己中」です。身体的特徴など、誰しも表には出さなくても、気にしているコンプレックスが一つや二つあるもの。率直な意見や感想のつもりでも、相手にとっては、「毒舌」に感じ、「あの人パワハラ気質だな」と嫌われて、距離を置かれてしまいます。

一方、自己中のよい面は、たとえば主体的に決断できること。そして、自分の意見を堂々と言えることが挙げられます。インターネットの普及も背景に個人主義が広がり、コロナ禍も経て、自分が関与したことの結果の責任は自分におかれる「自己責任社会」の傾向も進む現代ですが、それでも人は同調圧力には弱いもの。迷いや悩みを抱えている人も多い中で、周りに流されず意見を言う姿は、自信に満ち溢れているように見えて、ポジティブな面として印象づきます。また、それでいて、自分の意見や考え方を人に押し付けないのもポイントです。

自己中には良い点・悪い点がある

複数人で日程を合わせる場面を想像してみてください。自分の希望を真っ先に言う人は、不思議と好感を持たれやすいものです。ただ、先陣を切って「私、火曜日は無理だから!」とだけ言う人と、「私は火曜以外がいい。その日は母の病院に付き添いたいから」と理由を添えて言う人とでは、雲泥の差があります。前者はワガママな雰囲気が漂う一方、後者のほうは「協力してあげよう」という気持ちさえ起こさせます。なぜなら後者の発言からは、その人が大切にしていること、「価値観」も伝わってくるからです。自分の大切なものを理解したうえで、それを「優先したい」「大事にしたい」と言葉にする姿は素敵に映ります。理由がわかると安心できるので、尊重してもらいやすくもなります。

もちろん、自分の価値観だけでなく、相手の価値観も尊重する必要があります。自分を中心にした考えで生きつつ、相手も自分を中心にした考えで生きることを尊重できる人は、「自己中」でも好かれるのです。

モテる「自己中」の人を見てみると、基本的な社会のルールはしっかり守っている人が多いものです。それを踏まえての、自己決定した発言であれば、周りから「社会性が欠如した、一方的な発言ではない」と認識されます。自己中のメリットばかりを上手に表面化し、デメリットに関しては前に出ないように、ちゃんとコントロールできているといえます。好かれる人たちは、自己中の捉えられ方を無意識に理解できているのかもしれません。