支援を受ける側が財源を考慮する必要はない
【斎藤】それは、本当におかしな話なのです。例えば、私は障害者年金の申請書を書く時に、この人に年金を出したら国の財政が破綻するとかしないとかいうことは、一切考えません。自分の患者さんが楽になってくれれば、それでいいわけです。医療行政のことは、政治家が決めてくれ、と。
【佐藤】それは当然のことで、支援を受ける側が財源のことを考慮する必要など、ありません。「苦しいからなんとかしろ」と異議だけ申し立てればいいのです。それを全部受け止めて、どう整理していくのかが代議制民主主義であり、官僚制が存在する意味なのですから。
【斎藤】にもかかわらず、貧困層ほど忖度して、厳しい環境に自分を追い込んでいく、というのは、悲しい構図としか言いようがありません。残念ながら、コロナ禍でさらに格差が拡大し、そうした状況に拍車がかかっているのは間違いないでしょう。どこかで、そのおかしな回路を断ち切る必要があります。
【佐藤】知らずしらず、人の「生」を切り分ける優生思想がはびこる社会になっていた、などということにならないようにしなくてはいけません。
【斎藤】2021年8月、「新型コロナによる医療逼迫はない」と言っていた政府が、「重症化のリスクがない場合は自宅療養とする」という方針を打ち出しました。入院できずに亡くなっている人が多数出ていると報じられていますが、「命の選択」が現実のものとなっているわけです。こうした状況だからこそ、今佐藤さんのおっしゃったことを心に銘記すべきだと強く感じます。