「値引きで安くなったからといって、安易に飛びつくべきではない」と専門家は口をそろえる。値引き物件の中から、本当にお買い得なものを見つけるには、いくつか注意点があるようだ。
まず、2009年さかんにマスコミ報道された「アウトレットマンション」は、ここ数年の不況の産物である。大量に抱えた在庫処分を急ぐデベロッパーや、経営破綻したデベロッパーが投げ売りしたマンションを、再販業者が格安で買い取って販売するマンションのことだ。
「アウトレットマンションは、要するに売れ残りということです。そこには、当然売れない理由が存在するわけです。その理由が明確になっていて、ご本人がそれを理解したうえで、気に入ったというのであれば、お買い得かもしれません」と、住宅コンサルタントの平賀功一氏。売れ残った理由については、直接聞いてみればいいと言う。
一方、提示価格にも注意すべきだと住宅評論家の坂根康裕氏は指摘する。
「一時期、不動産ミニバブルに乗って消費者の需要を無視して一方的に住宅価格が上がってしまった。そこで売れ残ったものを、値引きして売るわけですから、大事なのは値引き率ではありません。下がった値段が、周辺相場より安いのか、立地や物件の品質からいって妥当なのかを見極める必要があります」
買った後の将来のリスクについても注意が必要だ。消費者を保護するために、売り主である事業者が、隠れた瑕疵(入居後に見つかった大きな欠陥)を10年間保証する住宅品質確保促進法や、売り主が経営破綻しても保証を受けられるようにする住宅瑕疵担保履行法がある。ほかにも、売り主が独自で購入者に物件の不具合を保証するアフターサービスもある。これらの保証やサービスが適用される物件であるか、売り主が再販業者に代わっても適用されるのかなどは、確実にチェックしておきたいポイントだ。
もともと、売れ残りの再販ビジネス自体は、かなり以前から行われていた。不況によって一気に物件が増えたことと、アウトレットというネーミングが受けて注目を集めるようになっただけだ。しかし、今後は「アウトレットマンションの市場規模が拡大するかというと、否定的」(平賀氏)という。各社で在庫の処分が進んでいるので、豊富な物件の中からお買い得なものを探せるというわけにはいかないようだ。