一方、定期券利用者以外のすべての運賃・料金収入である「定期外収入」は、パニック的に外出自粛が徹底された昨年度第1四半期に6割前後の大幅な減少(同)となったが、その後は(空港アクセスを担う京成を除けば)感染状況を反映しながら2割から4割程度の減少(同)で推移している。最大の感染者数を記録した「第5波」にあたる第2四半期も前年同期を上回っており、定期外利用は底を打ったと見られる。

減少したままの定期利用に対して、回復の傾向を見せている定期外利用。実際、各鉄道事業者はコロナが収束しても、テレワークの普及に代表される働き方の変化により、定期利用は元通りには戻らないとの見方をしている。これに対して定期外利用は、時間はかかるが元に戻るという期待が大きい。

定期外利用は輸送力に余裕のある日中時間帯が中心で、定期券のような大幅な割引もないため増収(収支改善)に直結する。定期外収入を増やすには、より多くの人に乗車してもらうか、利用者の単価を上げるかのどちらか、あるいは両方だ。

「若い子育て世代」という優良顧客を増やしたい

鉄道における単価とは運賃と料金であるが、より多くの運賃を払ってもらう、つまり普段の目的地よりも先まで移動してもらうということはあり得ない。現実的なのは、特急列車や有料着席列車の料金収入で単価を上げることで、前述の京王の取り組みはこの一環と言えるだろう。

一方、利用者を増やすのは容易なことではない。日本の人口は2008年をピークに人口減少社会に突入しており、2050年頃には1億人を割り込む見込みで、依然として人口増加が続く東京でも、2030年頃をピークに減少に転じると予想されており、各社間・路線間の沿線人口争奪戦は今後ますます激化するだろう。

小田急線唐木田駅近くの鉄道車両場
写真=iStock.com/TokioMarineLife
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そのような中で「小児運賃50円化」により「小田急線沿線は子育てしやすい」というイメージが定着すれば、若い子育て世代という末永く鉄道を利用してもらえる優良顧客の流入を促進し、沿線人口の維持、増加が期待できる。

それだけではない。通勤・通学定期利用は(定期券をもう1枚余計に買うことはないので)沿線人口に比例するのに対し、定期外利用は普段、鉄道に乗らない人を開拓する余地があり、また1人あたりの利用回数が増加すれば、延べの利用者を増やすことができる。