コロナ影響が2年間続くと危険水準

具体的には、

①新型コロナの影響で長期間売り上げが一定比率減少し、企業の維持コストである固定費がそのままでは賄えなくなると想定し、その分だけ資金繰り融資で対応すると仮定
②新型コロナの影響が一定期間継続した後でなくなり、その後EBITDAを全額債務償還に充てると仮定
③その債務償還期間を、業種ごとの財務データを用いて試算する

といった形で試算を行った。中小企業への影響と大企業への影響の差を分析するため、財務データとしては資本金1千万円以下の企業もカバーする「法人企業統計年次別調査」である19年度法人企業統計を使用した。

20年10月の分析で、すべての業種で一定期間売り上げが7割減少するとし、「コロナ対人4業種」の4つの業種に関して分析を行ったのが図表4である。

コロナ対人4業種の債務償還期間試算〔売り上げ減少に伴う維持コスト(固定費)を資金繰り融資で対応と仮定〕

中小企業を襲う「突然死」や「ゾンビ企業化」

この図表からわかるように、特に「コロナ対人4業種」の中小企業に関しては、そもそもの企業体力が弱い企業が多いことから、新型コロナの影響が長期化すればするほど債務が膨らみ、それを企業の稼ぐ力で返済することが難しくなる。

梅屋真一郎『コロナ制圧 その先の盛衰』(日経BP
梅屋真一郎『コロナ制圧 その先の盛衰』(日経BP)

一方、「コロナ対人4業種」の企業でも、大企業は体力があること等などから、新型コロナの影響が長期化しても債務返済能力があると考えられる。

もちろん、この分析では「法人企業統計調査」のデータを使っているため、あくまでも業種全体としての分析であり、個々の企業の事情によって実際には異なることは言うまでもない。しかし、そのような債務返済困難企業が現れることは想定できよう。

このように「コロナ対人4業種」の中小企業を中心に現れると想定される債務返済困難企業は、「企業としての突然死」(倒産などの破綻)や「継続困難企業化」(いわゆる「ゾンビ企業化」)の恐れがある。