中国から供給できず、バスやトラックが大混乱
現在、韓国でディーゼル車の排ガス浄化などに用いられる、“尿素水”の不足によって経済が混乱している。その背景には、尿素水の原材料となるアンモニアの輸入を、過度に中国に依存してきた韓国経済のある種の偏りがある。
中国では主に石炭からアンモニアを精製して尿素を作り、それを水に溶かすことで尿素水が生産される。最近、中国では石炭不足が深刻化しアンモニア生産が減少した。10月中旬、共産党政権は国内需要を優先するために尿素水などの輸出を制限した。
尿素水が不足した結果、韓国でディーゼルエンジンの乗用車やバス、貨物トラックの運行に重大な支障が出た。物流や市民生活への不安は高まり、韓国経済は大きな混乱に直面している。韓国国内では不足が続くとの見方から尿素水の価格が高騰しており、インターネットなどで個人間でも尿素水の高値での取引が頻発している。
これまで、韓国は経済の効率を高めるために、欲しいものを必要な時に、必要なだけ輸入すればよいという考えだった。結果的に、その姿勢が特定の国からの輸入依存度を過度に高め経済構造を歪めてしまった。わが国は、そうした韓国の教訓を他山の石として、経済安全保障の強化を真剣に考えることが必要だ。
輸出量の97%を中国に頼っていた結果…
報道されている内容を見ると、尿素水を補充するためにトラックや商用車がガソリンスタンドに続く路上で長蛇の列をなしている。また、尿素水の販売所にはタンクを持った人が列をなしている。韓国社会に重大な影響が出ていることは間違いない。
その背景には、韓国が尿素水を中国からの輸入に頼り過ぎたことがある。過去には韓国企業も尿素水の生産を行っていたのだが、中国企業との価格競争の激化による採算の悪化や純度の高い尿素水を生産するコスト負担などを理由に、2011年頃に韓国国内での尿素水生産を止めてしまった。現在、韓国は国内で需要される尿素水のすべてを輸入に頼っている。そのうち97%が中国から輸入されている。実質的に韓国の尿素水の調達は、ほぼ中国一国に依存している。
ところが、中国で石炭の不足が深刻化し、尿素水の原料であるアンモニアの生産が落ち込んだ。中国では経済成長に伴う電力供給などのために石炭の消費が増え、大気汚染が深刻化した。大気汚染対策のため、共産党政権は石炭の消費を減らすべく炭鉱の閉鎖に取り組んでいる。さらに、世界的な脱炭素への取り組みに対応するため、共産党政権は石炭火力発電所を減らしている。