業績好調の韓国大手企業に“陰り”が
10月に入り、韓国の大手財閥系企業であるサムスン電子や、同社と並ぶメモリー半導体の世界的大手メーカーSKハイニックスの株価が不安定に推移している。デジタル家電や液晶パネルなどを製造するLGエレクトロニクス(LG電子)の株価も同様だ。
これらの企業は、新型コロナウイルスの感染が再拡大する中で、世界の需要を迅速に獲得して業績につなげた。具体的には、テレワークや巣ごもり需要の増加を背景に、パソコンや高性能サーバー向けの半導体やテレビなどのデジタル家電需要が急速に増加した。特に、韓国企業が世界的シェアを持つDRAMや液晶、および有機ELパネルの需給は一時逼迫した。
しかし、足許では一部のメモリー半導体などの需給バランスに落ち着きの兆しが出始めた。そのため、サムスン電子などの業績拡大ペースの鈍化を警戒する主要投資家が増えている。また、中国経済の減速懸念や世界的なインフレ懸念など韓国経済にマイナスの影響を与える要素も多い。徐々に韓国経済の先行き懸念は高まる可能性がある。
サムスン電子の株価を左右する投資家の心理
サムスン電子の業績は好調だ。10月8日に同社が発表した7~9月の決算(速報)では、連結ベースの営業利益が前年同期比で27.9%増加の15兆8000億ウォン(約1兆4800億円)に達した。主な要因は、メモリー半導体事業の成長などだ。なお、10月下旬に同社は正式な決算を発表する。
好調な決算見込みにもかかわらず、サムスン電子の株価は不安定に推移している。その意味は、世界の主要投資家が同社の収益環境が不安定化するとの懸念を強めていることだ。その一因が、パソコンの一時的なデータ保存に用いられるメモリー半導体であるDRAM価格の下落だ。
足許、主要先進国では感染再拡大が落ち着きはじめ、徐々に動線の修復が進んでいる。それによって、テレワークや巣ごもり需要が支えたパソコンの需給が落ち着き始めた。その結果、DRAMなどメモリー半導体の需給逼迫がやわらぎ、パソコンメーカーはメモリー半導体を確保しやすくなっている。そのため、DRAMの価格が下落し始めた。それは、世界のDRAM市場で約42%のシェアを持つサムスン電子と約29%のシェアを持つSKハイニックスの業績にマイナスの影響を与えるだろう。