中国に追い上げられ、台湾との差は開くばかり
他方で、最先端の製造技術の分野では、サムスン電子が成長分野として一段と重視するファウンドリー分野で台湾積体電路製造(TSMC)がロジック半導体の回路線幅を小さくする微細化技術を強化し、最先端の製造技術の向上を推進している。一時的な需給の変化があったとしても、中長期的に世界経済のデジタル化関連投資は増加基調を維持し、最先端のロジック半導体需要は増えるだろう。
複数の事業を抱えるサムスン電子がファウンドリー特化のTSMC以上のスピードで最先端の製造技術を開発することは容易ではない。やや長めの目線で考えると、サムスン電子などの韓国企業は、汎用品分野では中国勢に追い上げられ、韓国政府が重視する半導体産業では最先端の製造技術の点でTSMCとの差が拡大する恐れがある。
韓国経済の回復ペースが鈍化する2つの要因
今後、徐々に韓国経済の回復ペースは鈍化する可能性がある。それは、外需と内需に分けて考えると分かりやすいだろう。
まず外需に関して、目先、世界のDRAMやパネル需要が追加的に減少する可能性がある。それは、韓国の経済成長を支えてきた輸出の減少要因だ。
半導体業界の専門家からは、2022年にDRAM価格が15~20%下落する可能性があると指摘が出ている。サムスン電子が液晶パネル事業の撤退時期を先送りしたこともあり、世界的にパネルの需給が緩み、価格に追加的な下押し圧力が加わるとの見方もある。そうした展開が鮮明となれば、韓国経済の成長を牽引してきた半導体などの輸出の増加ペースは徐々に鈍化するだろう。
また、中国では不動産デベロッパーのデフォルトリスクが一段と高まっている。本格的なデフォルトの発生は不動産市況の悪化につながり、中国の景気減速が一段と鮮明になるだろう。それは、韓国の対中輸出の減少につながる恐れがある。汎用型の半導体、自動車、デジタル家電などの対中輸出が減少すれば、韓国国内での設備投資にもマイナスの影響が及ぶ可能性がある。