米中の経済不安が韓国企業に波及している

パネル価格も調整し始めた。巣ごもり需要などに支えられた大型テレビの需要が一服したことなどを背景に、液晶と有機ELパネルの両方で価格が下落している。主なテレビ需要地である米中経済の先行き懸念の高まりもパネル価格にマイナスだ。

米国ではガソリン価格の上昇などを背景とするインフレ懸念の高まりや、今後の財政支出への不透明感から、消費者心理が不安定化している。中国でも貧富の格差の拡大や経済の成長率が鈍化するとの懸念を背景に、節約をより重視する消費者が増えているようだ。

その状況下、サムスン電子やSKハイニックスなど韓国IT先端企業の事業運営の先行き不透明感が高まっている。韓国株式市場の時価総額に占める両社の割合は大きく、韓国総合株価指数(KOSPI)の値動きも不安定だ。なお、DRAMと異なり、最先端のロジック半導体や車載向けの半導体の不足は2022年末、ないしは2023年の年初頃まで続く可能性がある。

サムスン
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重要顧客だった中国が一転して“ライバル”に

競争の激化懸念も韓国主要企業の業績懸念を高める要因だ。

メモリー半導体やパネル分野で、共産党政権による産業補助金などの支援によって、中国企業は韓国企業にとっての重要顧客から競争上のライバル(脅威)に変わり始めた。NAND型フラッシュメモリー分野では長江存儲科技(長江メモリー・テクノロジーズ、YMTC)が製造技術を高めている。パネル分野では京東方科技集団(BOE)が米アップル向けに有機ELパネルを供給している。また、スマホ分野でも中国のシャオミなどが世界シェアを獲得している。

米国の制裁によって、ロジック半導体などの分野において中国の大手ファウンドリー(半導体の受託製造企業)である中芯国際集成電路製造(SMIC)の先端分野の生産ラインの立ち上げは遅れている。新しい需要創出に不可欠な最先端の製造技術を中国が自力で生み出すことは難しいといえる。

しかし、すでに実用化された汎用型の製造技術に関して、中国企業は急速に実力をつけている。それは、日米などからの技術移転や高純度の半導体部材や製造装置の調達によって大量生産体制を迅速に整え、輸出を増やしてきた韓国経済にとって大きな脅威だ。逆に言えば、自力で新しい製品を創出できるか否かが、韓国企業に問われている。