女性客や親子連れでにぎわう店内
平日の昼下がり。鎌倉の「豊島屋」本店を訪れると、修学旅行生や老若男女の観光客、外国人旅行者で賑わっていた。みなの目的は、名物「鳩サブレー」だ。それぞれが迷う様子もなく、次々とカウンターで注文を済ませていく。
そのなかで、ふと目に留まったのは、若い女性客や親子連れの姿だ。彼女たちは入店するなり、「鳩サブレー」のあるショーケース……ではなく、店内の一角にあるグッズコーナーへとずんずん足を進めていく。
「あのポーチ、ふわふわでかわいい!」
「この消しゴム、かわいすぎて使えないよー」
「○○さん、これ仕事の合間にどうですか?」
会社の同僚と見られるグループ客は、ボールペン上部に取り付けられた鳩型のおもちゃ「ハトカー」をその場で走らせて、大いに盛り上がっていた。
商品棚を見ると、付箋・クリップ・指サックなど文具のほか、鏡・箸置きなどの雑貨も並んでいる。これらすべてに「鳩サブレー」のマークや、オリジナルキャラクター「鳩兵衛」がデザインされていた。
和菓子屋で、こんなに多くのグッズが販売されているとは――。正直面食らってしまった。
「鳩サブレー」は今から約130年前、明治時代に発売された商品だ。けれど意外なことに、近年になって過去最高売上を更新しており、顧客層の幅が広がっていると言う。明治生まれの「鳩サブレー」が、なぜ令和になってブレイクしているのだろうか。
最初のきっかけは目黒蓮さん
最近になって「鳩サブレー」が注目を浴びるようになったきっかけは、2024年に放送されたフジテレビの月9ドラマ、『海のはじまり』だ。主演の目黒蓮さんが劇中で食べていたことから、放送後に注文が殺到。一時はECサイトのサーバーがダウンした。
さらに、ドラマでは「鳩サブレー」が「誰かにもらったお土産」ではなく、「自分のために買うお菓子」として描かれた。世間では「定番土産」のイメージが強かったことから、視聴者にとっても、その衝撃は大きかったようだ。けれど、先入観を持たない若者が、同じように「日常のおやつ」として購入するケースが増えたらしい。
「もともとメインの購買層は40〜60代のお客様で、いただき物のイメージが強かったわけです。それが、ドラマで若い俳優さんが『自分用に買った』というセリフを言うのを見ましてね……。あのシーンはもう、私もびっくりしました(笑)」
そう語るのは、4代目社長の久保田陽彦氏だ。てっきり事前に知っていたのかと思いきや、当事者すら想像しなかったシーンだったとは、驚きである。





