「女体盛り」も実在していたようだが…

私がかつて「どうして男の人たちはこんなに金を使うのだろう」と疑問だったコンパニオン宴会は、今、どうなっているのだろうか。

温泉のコンパニオン宴会といえば、「女体盛り」を思い浮かべる人もいるかもしれない。私もアダルトビデオの中でだけ、見たことがある。

裸の女性が仰向けに寝そべり、その上に刺身を並べ、男たちが囲んで箸をつつく。冒頭に引用した「ザ・男の艶会」パンフレットにも、写真はないが、女体盛りプランの値段表は載っていた。

「今は、身体の上にそのまま刺身を並べることはできないんですよ。衛生上の問題で」

そう言ったのは、コンパニオンの女性だ。コロナウイルスが日本に入ってくる前、2019年に、小説『果ての海』(新潮社刊)の取材で話を聞いていた。

「じゃあ、女体盛りはやっていないんですか」

「いえ、ないことはないです。ただ食品用ラップを身体の上に敷いて、その上に刺身を並べてるんですよ。保健所の指導で」

食品用ラップ……。そもそも、女性の身体の上に刺身を並べて食べることも疑問だったが、ラップを敷いてまでやるものなのか。

そんな疑問をよそに、もう「女体盛り」は行われていないようだ。新型コロナウイルス禍により、団体旅行そのものが壊滅した。観光バスは稼働せず、旅行業界は次々と従業員を退職させ、温泉旅館も悲鳴をあげている。コンパニオンたちも、仕事を失った。

緊急事態宣言解除後の温泉地で見たもの

10月に入り、京阪神の緊急事態宣言がやっと明け、私は再び、あわら温泉に向かった。

JR芦原温泉駅(写真=SONIC BLOOMING/CC-BY-SA-4.0/Wikimedia Commons)
JR芦原温泉駅(写真=SONIC BLOOMING/CC-BY-SA-4.0/Wikimedia Commons

やはり旅館の駐車場に観光バスが停まっている様子もなく、玄関に掲げている団体名のボードにも何も書かれていない。旅館にも人の気配がない。

夜になり、「あわらミュージック劇場」に向かった。8時半前に中に入ると、場内は私ひとりだった。

やはり、緊急事態宣言が開けたとはいえ、客は簡単には戻らないのか。

最終的には客は6人になったが、それでも広い場内はがらんとしていた。

終演後、5月に「困っています」とメールをくれた、ベテランストリッパーの相田樹音さんにスナックで話を聞いた。

「土日は少しマシだけど、それでも15人ぐらいです。最近でも、お客さん1人の日はありました」と、彼女は言った。

2019年に、私が来た際は、浴衣を着た温泉客もいて、平日でも30人ぐらいはいた記憶がある。そのあと、新型コロナウイルス禍で、客足は遠のいた。

「私がデビューした頃……20年以上前だけど、その当時は日本に155軒、劇場があったんです。あわらミュージックも、1日に300人以上お客さんが来て、場内に入れないなんてこともありました」

彼女は、そう語った。

「昔は、旅館でお客さんが宴会をして、そのあとで仲居さんやコンパニオンさんが、劇場にお客さんを連れてきてくれたりもしてたんです。私たちが出張することもありましたよ。一日に、5~6回、旅館の宴会場で踊るんです」

そんな賑やかな時代があったとは、想像もつかない。