期待値を計算するために必要なもの
こうした計算をする習慣を身につけておくことは、長い人生で換算すると相当にお得になるはずです。
今回はネカフェを例にしましたが、カラオケボックスやボウリング場などのパック料金でも知っておいて損はしない知識です。
ただし、パック料金の割引率にもよるので、そこはご注意ください。最近は自動切替制で最安値の料金で利用できるチェーン店も増えていますが、よく行くお店があるのであれば、一度、料金表を先ほどのように研究して、表計算ソフトでシミュレーションするのもいいと思います。
さて、「期待値」が実生活で役に立つ例を挙げてみましたが、期待値の概念がいかに大切かといわれても、「それがなかなか計算できないのだ」と思っている人は多いかもしれません。
実は期待値を計算するためには、ちょっとしたバランス感覚と割り切りのようなものが必要です。
どういうことかというと、期待値を計算するためには、次の作業が必要になります。
1:まず起こりうるすべての場合を列挙する
2:それぞれの場合について起こりうる確率を計算する
3:さらにそれぞれの場合について得られる(損をする)値段や値を計算する
4:それらから期待値を計算する
この中の特に2が難しいとされています。
期待値をさっと計算できるためには、確率をそこそこ正確に計算できるか、が鍵なわけです。
ビジネスでは必ず数学が必要になる
高校時代に「文系」を選択した人は「理系」の人に比べて、2や3の部分の問題練習量が圧倒的に少なくなります。これが期待値の概念を知るという上での「文系」と「理系」の差だということもできます。
たとえ、あなたが、「昔から数学が苦手で……」と、理系の領域から逃げてきたとしても、ビジネスの世界では逃げてばかりはいられません。「できるだけ素早く」かつ「正確に」判断を下すことが必須になることが多々あります。
例えばある商品の価格をいち早く発表したほうが、競合他社よりも優位に立てるというようなケースは数多くあります。
そして、仮に先に発表できた場合でも、適正な価格を出せないと、安すぎて大損をしたり、逆に高すぎてぜんぜん売れなかったり、という結果になることも考えられるわけです。
つまり、売上を最大にするための適正価格をさっと決断できる能力が、ビジネスマンには求められるわけです。
そもそも最大最小問題は、高校数学の一番重要なトピックでもありますが、さまざまな関数で最大最小を求めさせる練習をしていないと、その発想にも至らない可能性さえあります。
例えば、たまたま原価が1個3円の商品を大量に輸入することになって、自社の店舗で売りさばかないといけないとしましょう。原価が安いので、価格をいくらにしたらいいのかまったく見当がつきません。
街の商店やインターネットなどで、その商品がいくらで販売されているか調査することは可能です。ただし、それらと同じ値段では誰も買ってくれそうにありません。もちろん安くしたらみんな飛びつくでしょうが、あまり安すぎると儲けが少なくなります。このように価格の設定というのは、想像するより難しいものです。
こういうときに、頭のなかに「上に凸な放物線」のような図が描けているだけでもかなり考えやすいのですが、それはやはり「理系」の選択者ならではの発想です。
とはいえ、高校時代や大学時代に数学を避けてきた人でも、ビジネスでは必ず数学が出現します。