「経営安定化基金」での穴埋めは実質破綻状態

民営化以降、鉄道事業の営業黒字を達成したことは一度もないJR四国も同様だ。21年度から5年間で1000億円の国の追加支援を受けることが決まったが、それまでの国の「経営安定化基金」の運用益で赤字を穴埋めしてきたやり方は実質破綻している。

過去には最大7%を超える高金利が国から約束され、年150億円の営業外収益があったが、17年度からはJR四国による完全自主運用に切り替わった。資金が底をつくたびに国に資金支援の追加や延長を求めてきたが、限界にきている。

JR北海道やJR四国は巨額の資金支援を受ける代わりに、国から厳しい経営チェックを受けることになる。特にJR北海道は人手不足で冬の大雪などでの保線業務に支障が出れば通常運行に影響が出る以外に、大きな事故にもつながりかねない。「輸血だけではもたない。経営の枠組みを抜本的に変えないといけない」と国交省も焦りの色を浮かべる。

活路はJRと私鉄との提携を進める「上下分離」方式

打開策の一つとして考えられるのが、「上下分離」方式だ。鉄路など運行インフラは国や沿線自治体が管理保有し、鉄道会社がそのインフラを借り受ける仕組みだ。国や自治体がインフラ関係費用を負担するため、鉄道事業者の費用負担が軽減される。欧州諸国の鉄道の大部分は上下分離方式で運営されている。

日本でも2007年に制定された地域公共交通活性化再生法により、上下分離の実施が制度上可能となったが、自治体などの反発から、その動きは鈍かった。しかし、地方の過疎化の進行や相次ぐ災害で地方路線の存続に向け採用に動くケースがようやく出てきた。

E5 系新幹線
※写真はイメージです。(写真=iStock.com/MasaoTaira)

11年7月の新潟・福島豪雨で被災したJR只見線は22年度から、また経営難に直面する近江鉄道は24年度から、それぞれ上下分離での運行開始を決めた。

JR九州は8月、22年秋の西九州新幹線(武雄温泉―長崎間)開業時に、並行する長崎線の肥前山口―諫早間を上下分離方式で運行するための申請を、国土交通相に提出した。

JR北海道はJR東日本が間に入る形で私鉄大手の東急電鉄と観光列車の分野で共同運営を昨年から展開している。「上下分離」方式が浸透すれば、JRと私鉄との提携の呼び水になる可能性は高い。国交省幹部は「コロナ感染が収束すれば、リベンジ消費に加え、インバウンドも戻る。コロナを奇貨として抜本的な改革に踏み込む必要がある」と漏らす。