7期連続で「全区間の赤字」のJR北海道

「官房長官、総理として国難ともいえるコロナ対策に全力で取り組まれるなか、当社の経営再建問題についても常に気にかけ強力なご支援を頂いたことに深く感謝申し上げます」。菅義偉首相が自民党総裁選に出馬しない方針を表明したことを受けて、JR北海道の島田修社長はこうコメントを出し、謝意を示した。

会見する島田社長ら
「経営改善委員会」後、記者会見したJR北海道の島田修社長(右)と委員長を務めるANAホールディングスの片野坂真哉社長=2020年11月19日、札幌市のJR北海道本社(写真=時事通信フォト)

後手後手のコロナ対策で批判を受け、「退陣」を突き付けられた菅内閣だが、訪日客の増加につなげたインバウンド関連の取り組みや「Go toトラベル」をはじめとする観光施策は低迷する北海道経済の活性化に大きく貢献したのは事実だ。

特にコロナによる旅客数の激減で崖っぷちに立っていたJR北海道にとって、年末に決まった国からの財政支援は大きかった。

JR北海道の2021年3月期の区間別収支は、全23区間で営業赤字だった。赤字幅は841億円と過去最大で、全区間の赤字は、区間別収支の公表を始めてから7期連続だ。

最後にすがるのは国しかなかった。政府は2020年度で切れるJR北海道とJR四国に対する支援を継続するための改正法を今年1月末に閣議決定した。このなかでJR北海道は2021年度以降3年間に総額1302億円の支援を受けることになった。過去2年の3倍を超える額だ。21年度からの新たな支援策では鉄道建設・運輸施設整備支援機構からの借入金を株式に振り替えるデット・エクイティ・スワップ(DES)や追加出資による増資も盛り込むなど「大盤振る舞い」だ。国交省の幹部は「東北出身で地方の窮状を知る菅首相が政権トップだったからできたこと」と打ち明ける。

自己都合退職者の7割が40歳未満の若手社員

JR北海道の島田社長は「経営自立に向けた経営改善が継続可能になるという意味で大変ありがたい」とした上で「徹底した経営改善に今後、背水の陣で臨む所存だ」と話すが、依然として再建の道筋は見えない。

なかでも深刻なのが、若手社員の大量流出だ。20年度のJR北海道の自己都合退職者は過去最高の183人に及んだ。しかも、その約7割が40歳未満の若手社員だ。同社は22年春入社の採用を21年春並みの270人としているが、このままのペースで退職者が増えると「列車運行に直接支障が出てくるところまで来ている」(島田社長)という状況まで追い詰められている。

実際、函館線(長万部~小樽間)では倶知安保線管理室に勤務する社員2人が新型コロナウイルスに感染し、運転士を含む社員約50人が一斉にPCR検査を受けたため、2月28日から3月1日にかけて一部運休する事態に陥った。運転士不足による運休は異例で、2月28日は運転士不足により5本が運休し、3月1日も31本の運休を決めるなど、人手不足が日常の列車運行に影響しはじめている。