西武ホールディングスがプリンスホテルなどの所有するホテルの売却を検討している。金融アナリストの高橋克英さんは「西武は2006年、ニセコのホテルやスキー場を米国大手金融機関のグループ会社に譲渡した。西武は今回の売却でも同じことをしようとしている」という――。
ザ・プリンスパークタワー東京
写真=時事通信フォト
2011年2月21日、ザ・プリンスパークタワー東京。左は東京タワー(東京・港区)

プリンスホテルが売却される

西武ホールディングス(西武HD)が、プリンスホテルなどの所有するホテルを売却する方針だと報じられている。売却対象となるのは、国内のプリンスホテル40施設のうち、約10施設となる見込みで、売却総額は1000億円を超える見通しだ。東京・芝公園に隣接する「ザ・プリンスパークタワー東京」に加え、「札幌プリンスホテル」や「びわ湖大津プリンスホテル」のほか、ゴルフ場やスキー場などのレジャー施設も売却候補という(時事ドットコム「西武HD、40施設売却へ ホテルなど、1000億円超で」)。一方、「軽井沢プリンスホテル」や「品川プリンスホテル」などは、グループ会社の継続保有することになる見込みだという。

2021年内に売却物件の選定を行い、売却後もプリンスホテルとして営業する。このため、プリンスホテルは、2022年4月以降は、運営に特化することになる。とはいうものの、買収側(所有者)にとって、採算性が改善しなければ、後述するニセコの事例のように、「プリンスホテル」ブランドから、ヒルトンやマリオットなど世界的ブランドを有するほかの運営会社に変わる可能性も高いといえよう。プリンスホテル売却の背景には、コロナ禍による業績悪化があるという。西武HDは鉄道事業に加え、ホテル・レジャー事業の比率が大きく、プリンスホテルの稼働率の低下で、202億円の減損損失が発生するなど、2020年度は過去最大の723億円の最終赤字となった。今期2021年度も、50億円の最終赤字と2期連続の赤字になる見込みだ。

昭和の時代は日本一のホテルチェーンだった

しかし、本当にコロナ禍やインバウンドだけのせいなのだろうか。西武HDのこれまでの経営戦略そのものに落ち度はなかったのだろうか。

実は、西武HDのホテルなどの大規模な資産売却は今回が初めてではないのだ。

西武HDの歴史を少し振り返ってみよう。西武鉄道の兄弟会社だったプリンスホテルにより、1960年代以降、ホテル・スキー場・ゴルフ場などが一体となったリゾート開発が全国で積極的に進められ、プリンスホテルは日本一のホテルチェーンとなった。スキー場は、苗場、ニセコ、富良野、万座など1987年には33カ所になるまで拡大した。バブル景気とも重なり、コクドの堤義明会長(当時)は、米国の経済誌『フォーブス』に「世界一の大富豪」として取り上げられ、個人の総資産は3兆円とも報じられた。

しかし、バブル崩壊による不良債権増加に続き、2004年に発覚した西武鉄道を巡る総会屋利益供与事件などで、堤義明会長は失脚。西武鉄道も同年12月に上場廃止処分となり、当時1兆4000億円もの有利子負債を抱えた西武グループは存亡の危機に陥った。このため、同族経営からの脱却とリストラのため、メインバンクであるみずほフィナンシャルグループから後藤高志氏が招かれ、2006年2月、西武HDが設立され、現在に至っている。