▼元木昌彦さんの心理

元・週刊現代編集長 元木昌彦●1945年生まれ。早稲田大学商学部卒。70年講談社入社。90年FRIDAY編集長、92年週刊現代編集長。ヘアヌード、ノーパンしゃぶしゃぶなどの大ヒットを連発し、販売部数は100万部を突破。著書に『週刊誌は死なず』。

「おまえらは全員、幼稚園レベルの編集者だ。俺がせめて小学校高学年レベルにしてやる」

私が「フライデー」の編集長に就任した初日に、編集部員に向かってした「挨拶」です。予想通り猛反発の嵐が吹き荒れました。当然ですよね。彼らだって、これまでやってきたプライドがある。それをある日やってきた「新」編集長に全否定されたわけですから。

だけど私としても、何もバカにしているつもりはない。編集長就任の際、副編集長から頼まれたことを実践しようとしただけのことです。それは、「とにかく部内を明るくしてほしい」との願いでした。当時は部数が伸び悩んでいた時期でもあり、暗くなるのもわからなくもないが、同じ仕事をするのであれば、やっぱり楽しいほうがいいに決まっている。

それで冒頭の「挨拶」になったわけです。部員は悔しいから全力で仕事に取り組むし、こちらもそうまで言った手前、生半可な気持ちではできない。なあなあで仕事を進めるより、ほどよい緊張感が出てよかったと思っています。

私が編集部に来た当初、韓国語、英語、中国語を操る東大卒の部員がグラビアの担当をしているのを知りました。本人に聞くと、本当は硬派な政治問題をやりたいとのこと。すぐに配置転換をして国際担当をしてもらいました。そもそも好きでこの仕事を選んだのだから、がんじがらめにしても仕方ない。経費についてもうるさく言わないようにし、休日も休みやすくした。その甲斐あってか、半年ほどたってから徐々に売り上げは伸びていき、部数が伸びれば当然部内も明るくなる。当初の目的は果たしたと言えるでしょう。