▼植木理恵さんの分析
人はポジティブなときには物事を緻密に考えられません。研究者や作家、データ処理を行う人にネアカは少ないですが、それは彼らにとってはむしろローテンションなほうが仕事をしやすいからです。ウキウキしながら計算や執筆をしていると、逆にミスは増えます。
一方で、「いろんな情報を取りにいこう」「ダメもとで当たってみよう」という職種には、ポジティブな明るさが必要です。むしろちょっとバカになる、くらいの勢いがないと、新奇ネタを物量的に集めることはできません。
彼の場合、それを個人ベースでも実践しているところがさすがです。「1日3人と会う」「30分は一人で過ごす」は、ハイとローの絶妙なバランス感覚です。つねに変わり続けられる人というのは、このような根アカな部分、ポジティブな部分も持っているものです。
「人に期待しない」という独自の部下育成論もなかなかのものです。
突然ですが、なぜ細木数子さんや勝間和代さんには、あれほど信奉者が多いのでしょう。それは、日本人は圧倒的に≪M≫体質だからです。心理学的に、≪M≫は「自分でもこの道を進んでいいのかわからない」というような、アイデンティティが定まっていない人のことを指します。だから他人から「あなたは、こうよ!」と断言されると、「えっ」と動揺してしまう。
元木氏は、この圧倒的大多数の≪M≫に対して、効果的に≪S≫的ボスキャラを演じたということでしょう。
でもきっと部下たちも本気で「期待されていない」とは思っていなかったと思うんです。口ではああ言っても、心のどこかで「期待してくれている」。そんな二面性提示の断言こそが、≪M≫的素質をくすぐり、個性を伸ばしたのです。
※すべて雑誌掲載当時
(渡邊清一=撮影)