「強いつながり」を「弱いつながり」へ広げる戦術

時に結果が伴わなかったり、価値観のズレが生じたりすることもありますが、5%リーダーは、メンバーから嫌われることを覚悟しており、精神的に強いのです。

ただ、社外へのキーマンや社内のステークホルダーに対しては強い関係を構築するように努めていました。

「オセロの角を押さえるようにキーパーソンと関係を構築して、形勢を有利にしていきたい」「ビジネスで大きなインパクトを生み出すために、要点を抑えたい」という発言が多くありました。献金や賄賂、ご機嫌取りなどといったレベルの話ではなく、ビジネスのツボを押さえようとする「効率志向」からくるものでした。

テレワークが進む中で、「偶然の出会い」に遭遇する機会が少なくなっています。

それでも5%リーダーは影響力のある人とつながり、そこからさらに関係を広げていくことを視野に入れていました。それは、強いつながりを元に、弱いつながりを広げていく戦術のように思えます。

談笑する人たち
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5%リーダーは「手放す」

5%リーダーは、チームの目標達成のみを考えています。

もちろんリーダー自身の評価を上げることも考えていますが、個人ではなく、チームの目標達成が最優先事項です。個人の目標達成を目指す5%社員とは違い、より大きな組織目標を達成しなければならない5%リーダーは、メンバーの協力が必須です。

もともと業務処理能力が高い社員がリーダーに抜擢ばってきされることが多く、自分の能力や頑張りでチームの目標を達成しようとする人は大勢います。

しかし、会社としてもそんなに「甘い目標」を与えるはずがありません。個人で目標達成するのであれば、管理職に昇格させる必要はないのです。会社としては、メンバーを使って、個人では達成できないチーム目標を達成させようとしています。

そのために5%リーダーは、メンバーには必ずタレント(能力)があると信じ、それを引き出すためにどのようにティーチングとコーチングをすべきか考えます。

メンバーに自由と責任を与え、自発的に動いてもらうことで、リーダー自身の管理負荷を減らそうともしています。すべてを完全にマネジメントできないと腹をくくっており、「メンバーのほうが自分より顧客や現場に近い分、より多くの情報に触れて業務スキルが高い」と答える5%リーダーが大勢いました。

つまり、5%リーダーは自分1人では達成できない大きな目標を達成するために、今までやっていた自分の能力や経験を手放しているのです。この上司の「手放す」という行為が実はチームの結束力を生み、それがチーム個々人の自主性を育みます。

メンバー同士が強み・弱みを出し合い、それを掛け合わせて1+1を3や5にするチームを作ろうとしているのです。