「格安スマホにしないと損」と言われていたが…
会社にとっての死刑宣告には2種類あります。ひとつは経営破たん。経営が行き詰まって銀行の支援も得られず経営者が頭をかかえて倒産の判断をせざるをえないケースです。そしてもうひとつのケースが世の中のルールが変わって「あれ、これだとうちは生き残っていけないよね」と気づいてしまうパターンです。
今、後者の状態にあるのが格安スマホのサービス事業者かもしれません。「OCN モバイル ONE」「mineo」「BIGLOBEモバイル」「IIJmio」「イオンモバイル」「BIC SIM」といった独立系の格安スマホサービスの市場は過去5年間で急成長しました。
少し前までは、携帯大手3社のスマホの通信料が月額で7000~8000円ぐらいかかるところ、格安スマホなら月額3000~4000円になる。あまりデータを使わないライトユーザーなら2000円ぐらい。だから格安スマホにしなければ損だというイメージがありました。
複数持ちをしている人も結構いるので契約台数だけ見ても実情はわからないのですが、世の中の調査でみると、大手3社とスマホ契約をしてメインで使っている人が75%ぐらい、格安スマホをメインで使っている人が25%ぐらいというところまで格安スマホの勢力が拡大していました。
MVNOにとって、値下げは収益圧迫に直結する
そこに出現したのが、昨年秋に誕生した菅政権の目玉政策である、スマホ料金の引き下げの動きです。NTTドコモが20GBで月額2980円という新プラン「ahamo」を発表し、あわててソフトバンクとKDDIがこれに追随する形になりました。これらの新プランはこの3月から提供を開始します。
そうなったら7GBで月額3000円といったこれまでの格安プランは生き残ることができません。3万件以上の契約数がある格安スマホ事業者は少なくとも50社以上あるそうです。それらの格安スマホ各社からもつぎつぎと値下げプランが発表されていますが、損益的にはぎりぎりのプランになるはずです。なぜならその大半が大手から借りた回線の利用料を支払ってサービスを提供するMVNOという事業形態ですから、値下げは収益圧迫に直結します。
業界の大幅再編淘汰は必至という状況の中で、今後、格安スマホの業界はどうなっていくのでしょうか。可能性をまとめてみたいと思います。