2015年には「二人っ子政策」に転換したものの…
中国政府の中にも一人っ子政策がいかに「合理性に欠く政策」であるかを分かっていた人たちはいたはずだ。だが、だれも止めようとしなかった。転換できなかったというのが真相だろう。共産党の歴代最高指導部が強力に推進してきたからである。産児制限を撤廃するとなれば政策自体が間違っていたことを認めることとなり、メンツの問題に発展する。
とはいえ、部分的な緩和は繰り返されてきた。夫婦の双方が一人っ子の場合には二人目を認めることとし、2013年には夫婦のどちらかが一人っ子であれば、とさらに対象が拡大された。その対象を全員に拡大すると表明するのに、さらに2年を要した。「来年からすべての夫婦に二人までの出産を認める」と公表されたのは、2015年であった。
妊娠から出産まで280日ほどのずれがあるため、この「二人っ子政策」への転換表明を受けた影響が数字として表れたのは2016年以降だ。
2016年は前年より131万人増え、1999年以来の高水準である1786万人となった。これに気を良くした政府関係者は「2017年には2000万人に回復する」と強気の姿勢を見せたが、結婚や妊娠というのはセンシティブな問題だ。たとえ政治体制が違えども人類に共通する。政府が笛を吹けども簡単に増え続けるわけもなく、出生数が反転して増えたのは2016年だけであった。
第二子を産む人以上に第一子を産む人が減っている
翌2017年には早くも息切れし、1723万人と再び減少に転じた。2018年は前年から200万人も減って1523万人となった。減少幅としては1988年の243万人以来、30年ぶりの大規模なものとなった。さらに2019年は1465万人と減り続けたのである。2020年の「1200万人」を含め、ここで紹介する中国の出生数は信憑性を欠くが、「二人っ子政策」に切り替えても、2人目をもうける人が飛躍的に増えることはなかったのである。
もちろん、二人っ子政策の効果が全くないわけではなかった。年間出生数に占める第二子の割合は増え続けており、2019年は57%に達している。確かに2人目は増えたのである。それなのに出生数全体として減ったというのは、第二子を産む人が増える以上に第一子を産む人が減ったということである。
背景には日本と同じく、長年の一人っ子政策の影響で出産期の女性が減ったという構造的な原因がある。2010年の人口センサスを基にした推計によれば、中国における出産の中心世代である22〜31歳の女性人口は2015年の1億1400万人から、2025年には7100万人へ4割近くも減少する。極めて速いスピードだ。