複数の子どもを育てるのは、心理的負担が大きい

一方、出生数が減少する要因としては、日本と同じく若者の結婚や出産に対する意識の変化も大きい。高学歴化とともに価値観が多様化し、晩婚化、非婚化が進むのが世界各国共通の流れである。中国も例外ではなく、結婚年齢は上昇傾向にある。

2020年の人口センサスによれば、大卒以上の学歴である人口は2億1836万人に上った。10万人当たりにすると、2010年の8930人から1万5467人へと、2倍近くに上昇した。最も婚姻件数が多い世代は、2012年までは20〜24歳だったが、2013年には25〜29歳となり、2019年には婚姻件数の46%を30歳以上が占めている。

しかも、現在、結婚期を迎えている若者は、一人っ子であるがゆえ、「小皇帝」などと呼ばれるほど過度なまでに大事に育てられてきた世代である。「兄弟姉妹は身近な存在」という認識はなく、複数の子どもを育てることへの心理的な負担の大きさも、少産に向かわせる理由となっているのだろう。

「経済的理由」で妊娠・出産をためらう夫婦たち

社会的要因もある。将来の所得不安から妊娠をためらう夫婦が少なくないのだ。不動産の高騰や保育所や幼稚園の不足、教育費の上昇が、結婚難や「希望する子ども数を持てない」という人の増大に拍車をかけている。特に都市部では公立の幼稚園が慢性的に不足しており、就学前から子どもの受験競争の過熱に伴う通塾が始まる。結果として、少産へと向かわせるのである。多くの夫婦が妊娠・出産を思いとどまっているのは、産児制限がかかっていたからではなく、「経済的理由から希望する子ども数を持てなかった」という理解が正しい。1人当たりの名目可処分所得の伸び率は、2011年の14%をピークに減っており、2020年は3.5%にとどまっている。

手をつないでいる二人
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こうした社会的要因の中でも深刻なのが、住宅難だ。これが結婚へのハードルをより高くしている。中国では結婚前に男性が住宅やマイカーなどを購入し結婚生活の準備を整えるのが一般的とされるが、住宅の販売価格はここ数年、毎年1割近くの伸びを見せてきた。所得の多くない若い層にとって、多額の出費への負担感は大きく、住宅を用意できないために「結婚できない」、と考える人が増えているのである。

「結婚できない人」を増大させた大きな要因がもう1つある。一人っ子政策のひずみだ。いびつな性比を生じさせることになったのである。