藤井フミヤ

1962年、福岡県久留米市生まれ。83年ザ・チェッカーズのボーカリストとしてデビュー。93年からはソロで活動を開始し、『TRUE LOVE』や『Ano ther Orion』などヒット曲を数多く発表する。時代を先取りした髪形や服装でファッションリーダーとなるほか、絵画やポスターなどコンピュータを使ったアートワークでもいち早く活躍。デビュー当時から料理の楽しさを発信してきた“料理男子”の先駆けでもある。音楽番組のメーンパーソナリティのほか、楽曲の提供やアート活動など多彩に活躍中。


 

鍋料理とバーベキューは仕切りますよ。「俺、奉行やります!」って真っ先に志願する。寄せ鍋やちゃんこは別ですが、鍋は食べる分だけ少しずつ具材を入れるのがコツですね。そして灰汁や浮いた脂は徹底的に取り除く。するとね、締めくくりの雑炊が、手をかけなかった隣の鍋なんかと比べると、もう圧倒的に違うんですよ。俺が仕切る鍋は雑炊が旨い!(笑)

バーベキューはいろんなソースを用意します。塩胡椒に醤油はもちろん生姜、にんにく、レモン、柚子胡椒、ポン酢、バジルやローズマリーなどのハーブ類。白身魚にはバジルソース&レモン、牛肉の赤身はガーリック&醤油と、焼くものによって味つけを変える。調味料を揃えるのも好きですね。

男の料理なので下ごしらえなどは丁寧にしませんし、ガーッと勢いで作りますが、子どもの頃から料理は得意です。うちはエンゲル係数が高くて(笑)、友達の家の倍くらいあるデカい冷蔵庫に、食べ物がぎっちり詰まっていました。そういう家庭だったので、俺もナオ(弟でミュージシャンの藤井尚之氏)も旨いものを食べるのが好きですね。お袋が美容師として働いていたので、料理を始めたのは早かったですよ。いちばん最初に作った料理? そりゃ、この年齢の男は誰でもインスタントラーメンですよ。マッチを擦ってガスコンロに火を点けると、大人になった気分がしたものです。高校時代には仕出し料理屋でアルバイトをして、包丁の使い方を学びました。一時期は調理師を目指したことも。もし音楽の道に進んでいなかったら、今頃シェフだったかもしれません(笑)。

今凝っているのは、夕方5時とか、まだ早い時間からカミさんとワインを開けて、飲みながら一品ずつ料理を作っては食べ、作っては食べ、コース仕立てでゆっくり味わうこと。手間のかかるものは作らないので、全く面倒じゃないですよ。

ちなみに昨夜は、庭で摘んだローズマリーで風味をつけたポテトのソテー、ニンニクと唐辛子入りオリーブオイルで炒めたキビナゴ、アンチョビソースをかけたなすのグリル、庭の紫蘇を使った冷製明太子パスタ、ブロックひれ肉のオーブン焼きを作りました。庭にはイタリアンパセリやミント、バジル、ルッコラ、トマト、なす、レタスなどが植えてあり、ちょっとした農園になってます。

普通俺くらいの年齢になると、そう毎日楽しいことは起こらないじゃないですか。でも食べることを大切にすれば、毎日必ず一度は楽しい時間を過ごせる。好きな人と、好きなときに、好きなものを、好きなだけ食べる。それがいちばんシンプルな生きる楽しみだと思う。俺なんて、朝起きたときから、夕飯は何にしようかなって考えてますから(笑)。