わずか2年で風景は一変した。いまやSNSの一番のウリは「ゲーム」だ。毎月数万円を投じる利用者が後を絶たず、「ゴールドラッシュ」の様相を呈する。はたしていつまで続くのか──。
「ゴールドラッシュ」はなにを残せるのか
モバゲーで「怪盗ロワイヤル」が始まってから約2年。以後、人同士の競争を核とするソーシャルゲームが成長を続けてきた。だが、いまのようなビジネスモデルが続く保障はない。大和証券の白石氏は「ゲームには飽きがある」という。
「これまで3年を超えて人気を保ち続けたタイトルはない。また有料くじの仕組みを持つタイトルは、煽り要素が非常に強い。月額数万円を支払うものをゲームと呼べるかどうか。飽きや嫌気から急速にユーザー離れが起きるリスクはある」
一方で、ゲームソフト大手スクウェア・エニックスの和田洋一社長は「ソーシャルゲームの寿命は巷間言われているより長いのではないか」と話す。
「家庭用がソーシャルに置き換わるわけではない。それぞれの領域は地層のように重なるもので、ゲーム市場全体は拡大を続ける。ただし完成品の購入から、遊びながら料金を支払うモデルへと変わっていくだろう。月額課金よりアイテム課金が有望だ。海外のゲーム会社の関心も高い。利用者は満足した分だけ払う、というモデルは世界中に広がり、新しいチャンスを提供することになるはずだ」
いまは過渡期なのだろう。「適正金額」は利用者によって、事後的に判断が下される。国民生活センターによると、2010年、オンラインゲームの高額請求について寄せられた相談は663件で、請求金額は平均で13万4000円だった。事業者は利用者ごとに上限金額を決めてはいない。携帯電話会社は通信費と合算した決済には上限金額を設けているが、クレジットカードなどを使えば、それを超えてゲームを利用できる。
成蹊大学の野島教授は話す。
「ソーシャルゲームはユーザーのモチベーションを高める様々な仕組みを持つが、現在は、そのシステムの終点にある収益化だけが注目され、競争が激化している。重要なのはモチベーションを高める仕組みだ。たとえば教育にゲームの要素を導入し『成績上位者にレアアイテムを与える』といった仕組みも考えられる。ソーシャルゲームは日本発の先端的モデルだ。収益以外の可能性について、事業者もまだ自覚的ではないように思う」
ある関係者は「いまの状況はゴールドラッシュ。だが金を掘ること自体に価値があるのか」と話していた。金はそれだけでは何も生み出さない。一方、採掘技術の発展は様々な恩恵をもたらした。これがバブルでないとすれば、ソーシャルゲームは何を生み出せるのだろうか。
※すべて雑誌掲載当時