わずか2年で風景は一変した。いまやSNSの一番のウリは「ゲーム」だ。毎月数万円を投じる利用者が後を絶たず、「ゴールドラッシュ」の様相を呈する。はたしていつまで続くのか──。
約8割は「有料くじ」
消費額は5倍に急拡大
約2年前から、こうした「デジタルくじ」の要素を取り入れたゲームが徐々に増え、それに伴ってソーシャルゲームの市場は爆発的に成長した。大手2社はいずれも会員数の増加を上回るペースで有料課金収入を増やしている。つまり会員数だけでなく、有料会員の一人当たり単価も増え続けている。10年9~12月期と直近の期を比べたところ、グリーでは有料課金収入を会員数で割ると75%増、モバゲーでは「モバコイン」と呼ばれる仮想通貨の消費額を会員数で割ると約5倍に達する。
ソーシャルゲームには終わりがない。競い合いが過熱すれば、課金単価はどんどん上昇していく。10年6月に行われたDeNAの開発者向け説明会の配布資料には、人気タイトルの目安として「課金率5~10%」「課金単価1500~3000円/月」と書かれ、「1億円タイトルを目指しましょう」と謳われていた。この後、市場の拡大により、毎月の売り上げが10億円を超えるタイトルも次々と出てきている。ソーシャルゲーム市場に詳しいループス・コミュニケーションズの岡村健右コンサルタントがいう。
「関係者によると現在での人気タイトルは課金率が10~15%、課金単価が5000~1万円のレンジ。さらに課金の約8割は有料くじによるものとみられます。くじの要素でギャンブル性が強まり、課金単価の急激な上昇を招きました」
デジタルアイテムの有料くじというビジネスモデルは、決して新しいものではない。成蹊大学経済学部の野島美保教授は「パソコンのオンラインゲームでは以前から行われていた」と指摘する。
「限定されたマニア層向けだったので、市場を変える力はなかった。むしろある事業者は、『課金単価を上げるのは簡単。しかし無理な引き上げはいずれユーザー離れを起こし、市場が縮小する』と話していました。現在のソーシャルゲーム市場では、参入者のほうが多かったので、単価上昇についていけずに離れた利用者は目立たず、ビジネスは広がり続けた」
国内での会員数の伸びは鈍化しつつある。大和証券キャピタル・マーケッツの白石幸毅アナリストはいう。
「日本の生産年齢人口は約8100万人。サイバーエージェントを加えた大手3社の会員数は合計7250万人。国内での拡大余地は限定的ではないか」
現在、主戦場は「ガラケー」と呼ばれる携帯電話だ。スマートフォン向けの売上高はまだ1~2割程度とみられ、各社とも対応を急ぐ。10年12月、グリーの田中良和社長は京都市での講演で「5年後には今の『ガラケー』の市場がなくなり、グリーのビジネスがゼロになる」と発言し、話題となった。さらに11年9月の東京ゲームショウの基調講演では「10億人が利用するサービスをつくる」とぶち上げた。世界共通仕様のスマートフォンへの対応は海外展開の布石だ。