「2類相当」のままでは、命を守れない

新型コロナウイルスの感染症法の扱いを、季節性インフルエンザ並みの「5類」に引き下げる――。これは、いま私たち日本人にとっての最重要事項だ。「2類相当」のままでは、コロナ患者は保健所の管轄となり、地域の開業医が診ることはできない。これではコロナから命を守れない。

長尾和宏医師
写真提供=長尾クリニック
長尾和宏医師

病床が足りず、入院できない人が増えている。これは「自宅療養」と呼ばれているが、正しくは「在宅放置」だ。いまの仕組みでは、初期時の医療行為は行われず、重症化するまでひたすら放置されている。

自分たちの命を守るため、そして医療を守るため、国民は現行システムの問題点を理解し、声を上げるべきだ。そして“コロナの専門家”といわれる方々に私は問いたい。なぜコロナを「2類相当」にとどまらせようとするのか、と。

「これは医療じゃない。治療ネグレクトだ」

最近、テレビではこんなニュースをよく見かける。

病床が逼迫し、コロナ陽性と診断されても入院できない。だから患者は自宅で療養せざるを得ず、横になって、苦しそうに顔をゆがめる。その模様が「大変な事態」として画面いっぱいに映し出される。

「これは医療じゃない。治療ネグレクトだ」――東京都内の開業医がテレビを見てそう憤っていた。

その時はピンとこなかったが、私も1週間前にそのような事態に遭遇し、「治療ネグレクト」の真の意味を理解した。

知り合いの東京都在住の40代男性がコロナ陽性と判定された。CTに映った肺は真っ白だった。つまり「肺炎」を発症している。保健所からは「通常であれば入院させたいが、ベッドがいっぱいで難しい。毎日体温などの報告を」と言われたという。「そうは言っても苦しいし、不安だ」と、本人から電話がかかってきた。

血中酸素濃度をたずねると「96%」という。基礎疾患はなく肥満でもない。それでは入院できないだろうと思った。東京都が血中酸素濃度の基準値を「96%未満」と厳格化して入院患者を抑えるという方針を打ち出したところだったからだ。その時は「血中酸素濃度には特に気をつけて」と言って電話を切ったが、心配だった。

1週間後に連絡すると、彼は国立病院に入院していた。私との電話の4日後くらいに血中酸素濃度が90%まで下がり、保健所に必死に訴えたところ、やっと入院できたとのことだった。

「点滴をしてもらい、薬をもらって、ずいぶん楽になりました。自宅では解熱剤と咳止めの処方だけだったから」

時折咳き込みながら、彼は電話でそう話してくれた。

その時に「治療ネグレクト」の意味が私はわかったのだ。