「10日間の在宅主治医制度」でオンライン診療する

現在東京都を中心とする関東では、第5波でパニックになっているが、人口比で考えると関西の第4波(GW近辺)はこれ以上であったそうだ。その波を乗り越えるため、関西では実質5類相当になりつつある。コロナに対応する開業医が増えて、オンライン診療も普及している。

それでは5類に落としたとして、具体的にはどのように医療体制を整えるか。

長尾医師は「10日間の在宅主治医制度」を提案する。地域のコロナ対応開業医のリストを医師会が公開し、コロナと判定された人は、そこから自分で主治医になってほしい人を見つけて連絡をとる。在宅主治医をお願いされた医師は、その患者に対してすぐにオンライン診療を開始して重症度を判定して必要な薬を処方し、24時間、メールで相談できる体制を構築する。

長尾和宏医師
写真提供=長尾クリニック
長尾和宏医師

「一案ですが、医師の診療報酬は10日間の包括払いで3~5万円程度に設定するんです。医師会内のコロナ診療医のグループでシェアしてもいいでしょう。本来5類ですと自己負担になりますが、特例的に年内は公費扱いにしたらいい。それでも国の財政から考えて、安いものではないでしょうか。現在は入院したら100万円、重症化でエクモ装着となれば1000万円コースなのですから。また開業医にとっても、10日間、コロナの患者の管理を請け負うことで診療報酬を得られるなら、引き受ける医師も増えるでしょう。普段はヒマな町医者でも冬に増えるインフルエンザ患者を多数診ることで、経営を成り立たせてきた歴史もあるんです。もちろん患者に重症化の兆しがみえたら、主治医が感染症指定病院に直接、入院交渉を行います。2類相当の現状ではこれもできません。入院調整は保健所しかできないのです」

5類に落とすことで、開業医と感染症指定病院の医師間で“直接の”やりとりが可能になって、医療効率が改善するというわけだ。

本当に「専門医だけが診るべき病気」なのか

長尾医師はこうも言う。

「ビルの中で診療している小さなクリニックなどは、制約があるので発熱外来を掲げることは難しいかもしれません。しかし、かかりつけの患者さんが感染し、自宅療養となれば、携帯電話を用いたオンライン診療が可能です。診察ができれば、治療も、その後の24時間管理もできます。ちなみに僕の自宅療養者の管理は、9割方、メールや電話でのやりとりです。携帯電話も一台あればじゅうぶんです。薬は家族に取りに来ていただいたり、看護師や薬剤師に届けてもらいます。地域の訪問看護ステーションにお願いするという手もあります」

メディアでは呼吸器専門医が足りない、感染症専門医が足りないと、しばしば報道された。本当に「専門医だけが診るべき病気」なのだろうか。コロナ発生から1年半、300人のコロナ患者の自宅療養を支援してきた長尾医師は、自宅でのコロナ看取りは一例も経験していない。