関係悪化の一途をたどる日韓問題
小渕恵三政権と金大中政権との間で合意された1998年の日韓パートナーシップ宣言で、日韓関係は歴史問題をめぐる対立に一区切りをつけて、新たな段階に進むと期待された。
しかし、その後の日韓関係は、
日本の森喜朗→小泉純一郎→安倍晋三→福田康夫→麻生太郎(以上、自民)→鳩山由紀夫→菅直人→野田佳彦(以上、民主)→安倍晋三→菅義偉(以上、自民)
と、それぞれ政権交代を経過したが、関係悪化の流れに歯止めがかからなかった。こうした関係悪化の原因となったのは、第一義的に、日韓の間に存在する、歴史問題や領土問題であった。
特に、慰安婦問題や徴用工問題など歴史問題に関して、1965年の日韓請求権協定や2015年末の慰安婦問題に関する日韓政府間合意などによって、日韓政府間で解決が合意されたにもかかわらず、韓国の司法が、加害者である日本の政府や企業に損害賠償を命じる判決を下したのである。
こうした判決は、政府間合意を受け入れ難いとする韓国の被害者および支援団体、そして、それを基本的には支持する韓国社会の世論に支えられたものだった。
2018年10月の韓国最高裁(大法廷)は、劣悪な条件での苛酷な労働という反人道的な人権侵害に対する慰謝料請求などを含む損害賠償請求は未解決であるとして、被告である日本企業に対する損害賠償を命じる判決を確定した。
この確定判決に基づき、日本企業の在韓資産に対する現金化措置の手続きが進まざるを得なくなったのである。
協力的だった経済や安全保障まで対立が拡大
慰安婦問題に関しては、文在寅政権は、日韓政府間合意を破棄するとは言わないが、これでは問題解決にはならないとして、合意に基づいて創設された「和解癒やし財団」を解散した。
さらに、2021年1月、ソウル中央地裁は、「主権免除」の国際慣習法によって外国政府を被告とした裁判は成立し得ないという原則を適用せず、元慰安婦女性に対する日本政府の損害賠償を命じる判決を出し、従来から訴訟に参加しないという日本政府の原則に則って控訴もしなかったために、判決が確定した。
こうした一連の韓国の司法判断に対して、日本政府は「国際法違反」だとして、韓国政府に対して、その是正を求めたが、韓国政府は「三権分立」なので司法判断には介入できず、日本政府の要求全てに応えることはできないという立場であった。
そして、今度は、日本政府が、そうした韓国政府への実質的な対抗措置として、2019年7月、対韓輸出管理措置の見直しを行い、これに対して韓国では官民挙げての対抗措置が採られることになった。
さらに、そうした渦中、韓国海軍による自衛隊哨戒機へのレーダー照射問題が起こり、これに関する日韓両政府間の見解が対立するなど相互不信が増幅した。このように、歴史問題をめぐる対立が、それまで日韓の協力分野であった経済や安全保障の領域にまで拡大する様相を示し始めたのである。