日韓における外交目標の乖離は決定的なのか

ただし、本当に外交目標に関する日韓の乖離が決定的なものであって、もはや日韓の間に存在する問題に起因する対立が激化するのに任せるしかないと「諦める」のか。

本書は、日韓の構造変容に適切に対応するということは、そうした現状に直面して「諦める」という選択をするのではなく、もう一度、相互の外交目標を接近させることを通して、日韓の間に存在する問題が対立にエスカレートしないように管理する必要があるということを主張するものである。

①対北朝鮮政策をめぐって

対北朝鮮政策をめぐる日韓の相互不信、乖離はそれほど決定的なものと考えるべきなのだろうか。日韓は、軍事的手段ではなく、あくまで「平和的な手段」によって北朝鮮の非核化を実現するという点で、米中など他の関係国と比較しても、最も利害を共有する。

ともすれば、軍事的手段の行使に傾斜しがちな米国、さらに北朝鮮の非核化よりも北朝鮮の安定や中朝関係の堅固化の方を重視する傾向にある中国などと比較しても、北朝鮮の核ミサイルによる軍事的脅威を最も敏感に感じ、しかも、それを平和的な手段によって達成しなければならないのが日韓である。

そして、北朝鮮の非核化のためには日韓がばらばらに米中に働きかけるよりも協力して働きかけたほうが影響力を行使することができる。また、北朝鮮の行動変容に関しても、日韓はそれぞれの経済協力という手段を組み合わせることで、北朝鮮の非核化に向けて影響力を行使することができる。

このように、一見、乖離が目立ってきた対北朝鮮政策をめぐって、いま一度、相互の乖離を点検し、相互の目的と手段を再確認することで、協力の可能性を探ることが、日韓の外交目標を実現するためには、最も合理的ではないのか。

対立点ではなく共通利益を見出すべき

②米中対立への対応をめぐって

米中対立が激化して、日本が米国の側につくことを明確にして中国と敵対することが、日本の外交や安全保障にとって決して望ましいわけではない。日本にとって、米中の緊張関係がある程度の範囲内で持続することが望ましいということになるかもしれないが、問題は、それを日本がコントロールできないことである。

木宮正史『日韓関係史』(岩波書店)
木宮正史『日韓関係史』(岩波書店)

韓国にとっても、米中対立の激化に伴って米中のどちらにつくのかという踏み絵を踏まされることは望ましくないわけだが、だからと言って、そうした状況を作り出させないようにする力があるわけではない。

このように考えると、日韓があたかも反対方向を向いて外交政策を選択することが合理的であるのかどうか、相当に疑問である。

確かに、米中関係をめぐる日韓の指向の違いが存在することは否定しないが、それは譲れないものであり協力できないものだと考える必要はない。むしろ、米中関係が極度の対決に至らない範囲に収めることに、日韓は共通利益を持つと見るべきではないか。

しかも、そうした共通利益を実現するためには、日韓が協力して米中に働きかけることが重要である。米中対立が不可逆的に激化するリスクに対して、日韓は手をこまねいているだけでは、結局「二者択一」を迫られ自らの外交の選択の幅を狭めてしまうことになる。

こうした状況に陥らないように自らの外交の選択の幅を少しでも広げる可能性を切り開くこうとするべきではないか。そして、そのためには日韓の外交協力をさらに深化することが必要である。

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