商品の登録から支払いまでをお客に任せる「セルフレジ」の導入が広がっている。一方で、「ちゃんとレジを通した」といって代金を支払わない新手の万引き犯も増えている。これまで5000人以上を捕まえたという万引きGメンの伊東ゆうさんは「不審な人には共通する動きがある」という。『万引き』(青弓社)より一部を紹介する――。(第2回)
レシート
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盗むつもりがないのに「未払い」で持ち帰ってしまうことも

普段通っているなじみのスーパーで、図らずも盗んだと疑われても仕方がないことをした経験がある。無論、商品をエコバッグに隠匿するような行為をしたわけではない。商品の読み取りから会計まで、すべてを自分ですませるフルセルフレジで精算して家に帰り、ポイントを確認するべくレシートをチェックしたところ、レシートに記載されていない商品があったのだ。

その商品は2キロの新米。バーコードを読み取り機に当ててチェック音を聞いた記憶もあるのに、なぜだか支払いがなされていない。店に電話をかけて、使ったレジの位置と時間、ポイントカードの番号を伝えて事情を説明すると、次回の来店時に支払ってくれればかまわないという。それも気持ち悪いので、すぐに行って支払いをすませることにした。

「このたびは、失礼しました。こういうことって、ほかにもあります?」
「ええ、たまにありますよ」
「ピッていう音、鳴っていたんですけどね」
「混雑する時間ですし、ほかのお客さまの音と混同されたのかもしれませんね。重い商品なので、読み取るときに揺らいで、うまくスキャンできなかったとも考えられます。どうか、お気になさらないでください」

サービスカウンターに出向いて事情を話すと、電話口に出たと思われる女性スタッフがいやな顔ひとつ見せずに対応してくれた。帰りの道中、過去にあったセルフレジを悪用した捕捉事案と、自分の行動を照らし合わせながら家路をたどる。

[もし、現場で同じことをする人を見かけたら、きっと声をかけていることだろう。悪意がないとはいえ、もし声をかけられていたら、どうなっていたことか……]

少しでもタイミングが悪ければ自分のキャリアが崩壊していた可能性まで考えられ、肝が冷える思いがしたものだ。ここでは、フルセルフレジを悪用する万引き犯について話していく。