バーコードを手で隠して商品をレジ袋へ

すると、勤務中盤にさしかかったところで、五十代前半とおぼしき髪の長い痩せた女性が目に留まった。ポイントデーでもないのに比較的高価なオリゴ糖と蜂蜜のボトルを3本ずつカゴに入れるところを目撃してしまい、ちゃんと買うのか気になったのだ。

追尾すると、次に複数の輸入調味料をカゴに入れた女性は、牛すね肉、スペアリブ、菓子パン、モッツァレラチーズ、そして最後に高価な赤ワインを2本カゴに入れて、レジのほうへと向かっていく。

入り口に設置された5円のレジ袋を手に取ってフルセルフレジのエリアに入った女性は、サポート役の店員からいちばん離れた台に陣取った。店員に背中を向けるようにして、レジ袋をスキャンしないまま精算台にセットすると、何食わぬ顔で商品の精算を始める。

レジでバーコードを読み込ませる
写真=iStock.com/frantic00
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ちらちらと女性が店員のほうを気にしている隙に、女の手とレジのモニターが確認できる位置まで移動して精算状況を確認すると、バーコードを手で隠す手口でレジを通さないまま、いくつもの商品をレジ袋に隠しているのを現認できた。

会計時、酒類を購入したことから年齢確認のためにサポート役の店員が駆けつけたが、女の悪事に気づいている様子はない。店員が離れ、スキャンした商品だけの精算をすませた女は、かなりの早足で店を出ていく。後方を振り返りながら店の外に出た女が、出入り口脇に止めた電動自転車に手をかけたところで、そっと声をかけた。

買ったモノより盗んだモノの方が多い

「あの、お客さま? 店の者ですが、そちらのお会計、ちょっと確認させていただけますか?」
「はあ? なんですか? お店開けなきゃいけないから、時間ないんですけど」
「すぐに終わりますよ。申し訳ないですけど、レシートの確認だけさせてください」
「ええ、これですけど……」

なぜだかわからないが素直にレシートを出してくれたので、レジ袋に入れた商品と照合させてもらうと、案の定、複数取りした商品の精算が一部しかなされていない。はっきり言ってしまえば、買ったモノよりも盗んでいるモノのほうが多い状況だ。

「お支払いすんでないモノ、たくさんあるんですけど……」
「え? ウソ? 私、全部通しましたよ」

そう言い張るので、直接本人に照合してもらうと、どこかわざとらしく狼狽した様子をみせた女が、意味不明の言い訳を始めた。